火消壺ひけしつぼ)” の例文
先日あまり寒いので火消壺ひけしつぼの中へもぐり込んでいたら、下女が吾輩がいるのも知らんで上からふたをした事があった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茶器の類は末期を思わせますが、雑器として作る赤楽風あからくふうな「火消壺ひけしつぼ」は、長方形のもので、なかなかひんがよく、どんな座敷に置かれてもよいでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
不意を食った馬春堂が下へころげ落ちたところを、手にふれた火消壺ひけしつぼをたたきつけ、騎虎の勢いはなお余って、まきや十能や火吹竹ひふきだけなど手当り次第に投げつける。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と火鉢のそばへづかづかとけば、御餅おかちんを焼くには火が足らないよ、台処の火消壺ひけしつぼから消し炭を持つて来てお前が勝手に焼てお喰べ、わたしは今夜中にこれ一を上げねば成らぬ
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火消壺ひけしつぼ等種々土をつて造る所ゆゑ自然子供への玩具も作り、浅草地内、或は東両国、回向院前等に卸売見世おろしうりみせも数軒ありて、ほんの素焼すやき上薬うわぐすりをかけ、土鍋どなべ、しちりん、小さき食茶碗、小皿等を作り
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
一匹のけもの火消壺ひけしつぼの中で
火消壺ひけしつぼそば
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
まして夜寒の月影に照らされて、静かに火消壺ひけしつぼとならんでいるこの液体の事だから、唇をつけぬ先からすでに寒くて飲みたくもない。しかしものは試しだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かちんくにはらないよ、臺所だいどころ火消壺ひけしつぼからずみつてておまへ勝手かつていておべ、わたし今夜中こんやぢゆう一枚ひとつげねばならぬ、かど質屋しちや旦那だんなどのが御年始着ごねんしぎだからとてはりれば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)