清水せいすい)” の例文
頭の中に籠ツてゐた夜の温籠ぬくもりを、すツかり清水せいすいまして了ツた、さて長火鉢ながひばちの前にすはると、恰で生まれ變ツたやうな心地だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そこで、彼は瓶を机の上に置いて、側に、用意の砂糖や清水せいすいを並べ、薬剤師の様な綿密さで、熱心に調合を始めるのでした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とばかり、おどろきあわて、見ぐるしくも七、八町みだれしりぞき、清水せいすいという川のところでやっとふみとどまった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
それで、大小二個の清水せいすいタンクを造って、よい飲料水を、横須賀よこすかの海軍専用の水道から、分けてもらうことにした。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
これは家人が縄床上に清水せいすいがあるのを見て、二ツの小白石を其中に置いたので、それから背痛を覚え、後また其を除いて貰って事無きを得たという談がある。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
古哲ソクラトスは日々に二斤のパンと雅典アテンス城の背後に湧出する清水せいすいとを以て満足したりしを思え
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
功徳くどく溜池ためいけと銃殺の権利 その森林の四里の間は一里ごとに大なる溜池があり、その溜池に鉄管が通じて居って往来の人に水を供給するようになって居る。その水は実に清水せいすいである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
梓はここに到って、胸中まず後の謝恩を決しながら、と差出した、医師のごとく、しかく綺麗な手に、一杯の清水せいすい、あたかもたまのごときをそそいで、さっと砕けると更に灌いだ、しずくも切らせず
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近頃汚水から清水せいすいを得るのに電気分解を用いる法が出来た。汚水中にアルミニウムの電極を入れて電流を通ずれば、過酸化アルミニウムを生じ、これが種々の汚物に結合して固まってしまう。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その周りには四十九の小燈を懸けつらね、中央に本命の主燈一さんを置いて、千々種々ちぢくさぐさの物を供え、香をき、じゅを念じ、また、折々、盤の清水せいすいをかえ、かえること七度、拝伏して、天を祈る。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一どきに清水せいすいで洗ってはふくというようにするのです。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
「この島では、よい清水せいすいは出まい。しかし、どうにかして、飲めるくらいの水がほしい。榊原君の意見はどうか」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
本尊に供えたところの清水せいすいを頂かせると、それは甘美の清水であるので、病人は心から喜んで飲んで、そして定基を見て微かに笑う、其の此世に於て今はただ冷水を此様かように喜ぶかと思うと
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして、清水せいすいをくんで手洗ちょうず、嗽口をすまし、あらためて席へもどってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まんいち、食糧がなくなっても、魚をつってたべ、島にあがって清水せいすいもくめよう。いよいよ水がなくなったら、この島々にたくさんいる、海がめの水を飲もう。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)