混凝土コンクリート)” の例文
氷層以外の部分の土は大体一ように固くなって、混凝土コンクリートのように凍っている。氷層にも色々種類があり、混凝土状もまた一種ではない。
凍上の話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その混凝土コンクリート氏こと、山木やまき勘九郎氏邸の前を通ると、鬱蒼うっそうたるかしの木立の奥に、青空の光りを含んだ八手やつでの葉が重なり合って覗いている。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二十人は、角面堡の混凝土コンクリートの長い壁にそって、二間おきぐらいに立たされた。竜太郎は五番目だった。その右隣りにアウレスキーがいた。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
なるほど万里の長城のごとくに蜿蜒えんえんとして、見事な混凝土コンクリート溝渠インクラインが走っている。彼方かなたの丘に見え隠れして、時々車窓近くに並行してくる。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
菓子の鹿の子のように、混凝土コンクリートを土台にして形のそろった石を張りつけたのであろう。丘の下から見上げるのだから、その全貌は展望出来ない。
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
明治中世の「文芸倶楽部」口絵写真には堤防混凝土コンクリートの出来以前の桜花爛漫たる秀景が掲載されてゐるが、さうした時代のこの辺りの風景を美しく紹介してゐるものは
巣鴨菊 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
南面の窓に並んで、鉄筋混凝土コンクリートの上層建築が半分ほど出来あがっていた。
都会地図の膨脹 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
よく見ると幅が三尺ばかりある混凝土コンクリートの階段が下へ降りてるらしい。
凍るアラベスク (新字新仮名) / 妹尾アキ夫(著)
面白いのは、混凝土コンクリート状凍結である。今の霜降状凍結で氷層以外の部分は、粘土が白く混凝土のように凍っているだけである。
凍上の話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
真っ黒に焼けた柱の燃え残りが、あちらこちらに不気味に突っ立って、テラスの混凝土コンクリートゆかだけが残っているのが、何ともいえぬ凄惨せいさんさです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
……すると、それと殆ど同時に、混凝土コンクリートの厚い壁を隔てた隣りの六号室から、魂切たまぎるような甲高かんだかい女の声が起った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
円形植込コルベールの両側をめぐって、門のほうへ混凝土コンクリートの白い道がつづき、その上に秋の月が、蒼白い光を投げている。
鹿児島市は、半ば廃墟はいきょとなっていた。鉄筋混凝土コンクリートの建物だけが、外郭だけその形を止め、あとは瓦礫がれきの散乱するちまたであった。ところどころこわれた水道のせんが白く水をふき上げていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
溝渠インクラインはさぞ満々たる水をたたえて走っていると思いのほか、なんと一滴の水もなく、カラカラに乾き切って混凝土コンクリートの底は、灰色の地肌じはだを見せているのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
ちょっと忍び込んでみたくなる位である。多分、あの樫の木のくらがりが御自慢なのであろうが、混凝土コンクリートを喰った証拠に混凝土コンクリートの家を建てるのはドウカと思う。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
凍土は混凝土コンクリートに劣らぬくらい硬いので、鶴嘴つるはしの先が直ぐ傷んでしまう。それを時々研ぎながら、カチンカチンとほんの少しずつ凍土の中に穴を掘って行くのである。
凍上の話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
公園の広場をとりまく灌木のひくい斜面のしたに、水飲み場のついた混凝土コンクリートの小さな休憩所がある。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかし彼の想像のなかでは、ごみごみした家の露地のつきあたりに、その建物はうすっぺらな混凝土コンクリート造りで立っていた。その中に入れられている三元の姿も、彼はある程度まざまざと想像できた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
高き混凝土コンクリートべいめぐらしたる同校構内に校外の少女を同伴し来るが如きは可能性の少ない一片の想像に過ぎず。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
金貨は混凝土コンクリートの床にね返って、チリリイン! と涼しい余韻を、いつまでも人々の耳に響かせていた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
あんなことになった……洋館の西側に、混凝土コンクリートの馬鹿でかいケチンをつくったのは、ああしておけば、ケチンが扶壁ふへきの役をして、いちどに、ぐしゃっといかずにすむからですよ。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その奥さんは、その亭主の尻拭い紙である色々な重要書類を紛失したのを苦にして、発狂して死んでしまった……と云ったら誰でも「ああ。あの混凝土コンクリート野郎か」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
翌朝、監房監守が点検にゆくと、東側八号室の女は細紐で固く喉をしめて縊死いしをとげていた。ちょっと胸にさわって、もう絶命しているのを見てとると、靴音高く混凝土コンクリートの廊下を走り去った。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その巡査の眼の前の混凝土コンクリートの上に又野は、三好の死骸をドタリと突き放した。血に染まった丸坊主の両腕を突出してヨロヨロと立上った。腰をかがめてヒョコリとお辞儀をした。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右手に見えております混凝土コンクリートの暗い階段は、この部屋が地下室である事を示しておりますので、正面に並んだ白ペンキ塗の十数個の大きな抽斗ひきだしは、皆、屍体の容器なので御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
眼をらしながら身構えていたが、そのうちに薄黒いダンダラを作った花壇の向う側の暗黒を、白々と横切っている混凝土コンクリート塀に眼を止めると、彼は思わずニンガリと冷笑して首肯うなずいた。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
青黒い混凝土コンクリートの壁で囲まれた二けん四方ばかりの部屋である。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)