浮嚢うきぶくろ)” の例文
舵は浮嚢うきぶくろを縛りつけたロープで左寄り十度程の処へ固定され、緑色の海草が、舵板ラダーの蝶番へ少しばかり絡みついていた。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
こゝろにしらけた以上に白け切って眼の裏のまぼろしに、不思議と魚の浮嚢うきぶくろ、餅の青黴あおかび、葉裏に一ぱい生みつけた小虫の卵、というようなものが代る/\ちらちら見え出して
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すこし離れたところで、麒麟きりん浮嚢うきぶくろで遊んでいる五六人のお嬢さんの組へ叫びかけて見る。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
魚のはらは、僕がく。わたも出す。それから、浮嚢うきぶくろかかとでぴちんとつぶす。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
たれ一人ひとりよこるなんど場席ばせきはない。花枕はなまくら草枕くさまくら旅枕たびまくら皮枕かはまくらたてよこに、硝子窓がらすまど押着おしつけたかたたるや、浮嚢うきぶくろ取外とりはづした柄杓ひしやくたぬもののごとく、をりからそとのどしやぶりに、宛然さながら人間にんげん海月くらげる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)