ひろ)” の例文
すなわち全国でひろくサノボリという日に、もうサンバイサンは上げてしまって、それで田の神の祭はすんでいるものと思っている形がある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
裏梅うらうめの模様を付けた物がずいぶん流行したが、この六三がけのように、一つの狂言に因んだ物がこれほどひろくは行なわれなかったようである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ドイツ人にもひろく交際を求めて見たが、丁度日本人に日本の国語を系統的に知った人が少いと同じ事で、ドイツ人もドイツ語に精通してはいない。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『活文壇』は木曜会同人どうじんの作を発表するのかたわらひろく青年投書家の投書を歓迎して販売部数を多からしめんことを試みたり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ここにおいて法例という語の用例が一変することとなって、従来は刑法の通則に限って用いられておった語をひろく法律通用に関する総則に用いるようになった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
わずかの坊さんたちにだけ信心が残るなら、宗教の時代は去ったといってもいいでしょう。神の王国を来らすためには、信仰がひろく衆生に行き渡らねばならないのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
といふ風になつてゐたところから、シガアがひろく用ひられるやうになつたのだといふことだ。
今上きんじょう陛下は武門政治を初め一切の有害無用な旧習を破壊遊ばし、あわせてひろく新智識を世界に求める事をすすめ給い、学問、技術、言論、信教、出版等あらゆる思想行動の自由を御許しになり、生命
女子の独立自営 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ひろく行はれ亘つたものと思はれる。
桃の伝説 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
今もこの国の東半分に、ひろく守られ続けている霜月しもつき三夜、すなわち旧十一月二十三日からの稲祭、いわゆる大師講の名の起こりでもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これに因つて世人せじんひろくフェノロサが日本美術について最も広大深刻なる見解を有する人なるを知りぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
万年筆はまだひろく行なわれない時代で、万年筆を持っている者は一人もありませんでした。鉛筆は折れ易くて不便であるので、どの人も小さい毛筆を用いていました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし観察がいたずらひろきに失せぬために、わたくしは他年抽斎が直接に交通すべき人物に限って観察することとしたい。即ち抽斎の師となり、また年上の友となる人物である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
千年以上も昔から朝廷に用いられ、また民間でもひろく行き渡ってはいるが、節という語はともかくも日本語ではない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中にも良三の父は神田松枝町まつえだちょうに開業して、市人に頓才とんさいのある、見立みたての上手な医者と称せられ、その肥胖ひはんのために瞽者こしゃ看錯みあやまらるるおもてをばひろられて、家は富み栄えていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
但しこれは宋の太宗たいそうの命によって、一種の政府事業として李昉りぼうらが監修のもとに作られたもので、ひろく古今の小説伝奇類を蒐集したのでありますから、これを創作と認めるわけには参りません。
近い頃自分は『大白神考おしらがみこう』と題する一書を公けにして、東北地方にひろく行われるオシラサマの信仰につき、今まで考えていたことを叙述しておこうと試みた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
孝昭帝こうしょうていのときに、令してひろく天下の才俊をすということになった。
この物語のひろくまた久しく行われていた事実に関しては、後年必ずその幽玄の理を説く人があろうと思うが、それは自分などの今試みようとするところではない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むしろこういう顕著けんちょなる実例にもとづいて、改めてここから研究せられてよい問題である故に、ひろく児童文化の考察者のために、我々はこの記録を残して置きたいのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ひろく日本という国に住む者の共に知り、共に守ろうとしていたものが、いかなる慣習であったかを明らかにしてみたいので、昔とくらべて目的はまるでちがって来ている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかしこうまでして見たところで、今までひろく行われていたアマミヤ・アマミキュの概念を覆えすには足りなかったのは、つまりは民間信仰の、底になお絶えず流れていた力だと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)