毀誉きよ)” の例文
旧字:毀譽
世の毀誉きよもまた、これにしたがい、よく難字を解しよく字を書くものを視て、神童なり学者なりとして称賛するがゆえに、教師たる者も
文明教育論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
まして毀誉きよに煩はされる心などは、とうに眼底を払つて消えてしまつた。あるのは、唯不可思議な悦びである。或は恍惚たる悲壮の感激である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして人間の世は過去も将来もなく唯その日その日の苦楽が存するばかりで、毀誉きよ褒貶ほうへんも共に深く意とするには及ばないような気がしてくる。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
懐古と考証とにふけっているので、世上の紛々たる毀誉きよの如きは、あえて最初から慈姑くわいの頭の上には置いていないのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしまた俗流の毀誉きよを超越して所信を断行している高士の顔も涼しかりそうである。しかしこの二つの顔の区別はなかなかわかりにくいようである。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
後、有名なる著書『類人猿の心的能力ファカルテス・メンタレス・デス・ゴリラ』の一巻をもたらして、ゴリラ言語を学界に発表、毀誉きよ相半ばせり。当時夫人は該地において熱帯病を得て歿す。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
始めや之を尊んで詩界の新潮と曰ひ、後や之をいやしみて詞壇の雞肋けいろくとす、天下何ぞ毀誉きよの掌を反すが如くなる。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
婦人は毀誉きよを耳にも懸けず、いまだ売買の約も整わざる、襯衣を着けて、はだえを蔽い、肩を納め、帯をめ、肩掛ショオルを取りてと羽織り、悠々として去らんとせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毀誉きよを意味する何の表情も、お見うけすることが出来なかったのでございます。
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
しず岩屋いわや』、『西籍概論さいせきがいろん』の筆記録から、三百部を限りとして絶版になった『毀誉きよ相半ばする書』のような気吹いぶきの深い消息までも、不便な山の中で手に入れているほどの熱心さだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
得失・毀誉きよ・尊卑・上下のどういふ場合にも異色をれず、やはらぎにみちた妙音声であつて、師に接する者、その声を聞いただけで信に入ることもむべなるかなである、といつたといふ。
暗闘、嫉妬、愛憎、毀誉きよ、人間のもつあらゆる葛藤かっとうはここにもある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まして毀誉きよに煩わされる心などは、とうに眼底を払って消えてしまった。あるのは、ただ不可思議なよろこびである。あるいは恍惚こうこつたる悲壮の感激である。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行蔵こうぞうは我に存す、毀誉きよは他人の主張、我にあずからず我に関せずとぞんじそうろう各人かくじん御示おしめし御座ござそうろうとも毛頭もうとう異存いぞん無之これなくそうろうおん差越之さしこしの御草稿ごそうこう拝受はいじゅいたしたく御許容ごきょよう可被下くださるべく候也そうろう