欵待もてな)” の例文
われは物語の昔日のあやまちに及ばんことをおもんぱかりしに、この御館みたちを遠ざかりたりしことをだに言ひ出づる人なく、老公は優しさ舊に倍して我を欵待もてなし給ひぬ。
暑い二階で彼等を欵待もてなしたが、小野田も彼等から、商売の資本でも引出し得るかのように言っているお島のことばを信じて、そこへ出て叮嚀ていねいな取扱い方をしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
きやくさまはお二階にかいなりといふともなはるゝ梯子はしご一段いちだんまた一段いちだん浮世うきよきといふことらでのぼくだりせしこともありし其時そのとき酌取しやくとをんなまへはなれず喋々てふ/\しく欵待もてなしたるがをんなもしらば彌々いよ/\面目めんぼくなきかぎりなり其頃そのころ朋友ともいまあそびにんはぢやうものなにぞのは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「私はこの病気が起ると、もうどうすることも出来ないんです。それに家も、これから夏はひまですから、お欵待もてなしをしようと思っても、そうそうはきれないんです」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そう言ってきめつけそうな目をして、小野田は疳癪かんしゃくが募って来るとき、いつもするように口髭くちひげの毛根を引張っていたが、調子づいて父親を欵待もてなしていた彼女に寝込まれたことが
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)