はち)” の例文
そこで、冷かしも、ぜっ返しも気に掛けるいとまなく、見栄みえ糸瓜へちまも棒に振って、いきなり、おはちからしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてそれが出て行くとそこらを片着け多勢の手で夕飯の餉台ちゃぶだいとともにおはち皿小鉢さらこばちがこてこて並べられ、べちゃくちゃさえずりながら食事が始まった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
土間どまにずらりと祝い酒の鏡を抜いて、柄杓ひしゃくが添えてある。煮締めの大皿、強飯こわめしのおはちが並んでる。下戸げこには餅だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「今度は俺の方へおはちが廻って来たそうな」とお種も笑い砕けた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
柱時計はもう十二時まはつてゐた。ばあさんは、めしましたあとえて、下女部屋で御はちうへひぢいて居眠ゐねむりをしてゐた。門野かどの何処どこつたかかげさへ見えなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分にはあっちの見当けんとうがわからなかったが、とにかく婆さんの出て来た方角だろうと思って、奥の方へ歩いて行ったら、大きな台所へ出た。真中に四斗樽しとだるを輪切にしたようなおはちえてある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)