権威けんい)” の例文
旧字:權威
下劣な策略だけに終始している少佐のいうことに、何の権威けんいがあろう。そう思って彼は相変らず少佐の顔を見つめたまま、默りこくっていた。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その中には天文学の権威けんいといわれるような、えらい学者も、たくさんありましたので、人びとはその説にすがって、わずかな心をおちつけていました。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
赤見沢あかみざわ博士のことです。あの有名な実験物理学の権威けんい、そして赤見沢ラボラトリーの所長、万国ばんこく学士院会員、それから……いや、後は省略しましょう。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
上役の権威けんいを誇示して、めつけるのであった。伝八郎は、争うことの愚を悟った。荘田下総守といえば、柳営でも人の知れる柳沢出羽守股肱ここうである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「熊野君、今も言った通り、熊野権次郎では文章家らしくない。素人に書いて貰ったと思われると、折角の自叙伝に権威けんいがつかないから、君、一つ雅号をつけ給え」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また社会的に発達している伝統的権威けんいによって、父は子をある程度まで圧迫あっぱくすることは出来得る。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
さっき危険きけんの場合にしめした冷静沈着れいせいちんちゃくのおかげで、急にかれに加わった権威けんいはもううしなわれていた。
俊寛 権威けんいをもって言ってください。それはうそではありませんか、あなたは信じますか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
学の権威けんいについて云々うんぬんされては微笑わらってばかりもいられない。孔子は諄々じゅんじゅんとして学の必要を説き始める。人君じんくんにして諫臣かんしんが無ければせいを失い、士にして教友が無ければちょうを失う。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
彼等、哀れな農民の上に運命の神は絶大の権威けんいを持って居るのである。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
遵奉じゅんぽうとか服従とかいうことのたいせつなことはいうまでもないが、ここでは守るべき法も、従うべき権威けんいもまだできていないのだから、もしそれが必要なら
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
博士とは、しばらくいっしょにならないが、カンノ博士こそは、正吉少年を冷凍球れいとうきゅうから無事にこの世へ出してくれた恩人の一人で、有名な生理学の権威けんいである。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
従来じゅうらい築城試合ちくじょうじあいがさきであったが、ゆみ兵家へいか表道具おもてどうぐ、これがほんとだという意見いけんがある、あまり信玄しんげん遺風いふうをまねているのは、徳川家とくがわけとしても権威けんいにかかわるという議論ぎろんがあって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれの信念の自然の発露はつろであったかもしれないが、——「国体」とか、「陛下」とか、「大御心」とかいう言葉で、自分の論旨ろんし権威けんいづけることに努力した。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
御旗楯無の宝物は、武田家の三種の神器じんぎだ。これを失っては、甲斐源氏かいげんじ家系かけいはなんの権威けんいもなくなってしまう。伊那丸いなまるをはじめ他の六人まで、ひとしくここに、色をうしなったも当然である。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本の村落史研究の権威けんいであり、友愛塾では、毎回その研究を背景にして、新しい農村協同社会の理想を説くのだったが、色の黒い、五分無髯むぜんの、ごつごつしたその風貌ふうぼうは、学者というよりは
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「このまま放っとくと、上級生の権威けんいにかかわるぞ!」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)