楽々らくらく)” の例文
旧字:樂々
身仕度みじたくを整えた伝吉は長脇差ながわきざしを引き抜いたのち、がらりと地蔵堂の門障子かどしょうじをあけた。囲炉裡いろりの前には坊主が一人、楽々らくらくと足を投げ出していた。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
生れて四十年、一たんの土と十五坪の草葺のあばらぬしになり得た彼は、正に帝王ていおうの気もちで、楽々らくらくと足踏み伸ばして寝たのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宗助が机の前の座蒲団ざぶとんを引き寄せて、その上に楽々らくらく胡坐あぐらいた時、手拭と石鹸シャボンを受取った御米は
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まれにあめだけは、楽々らくらくとされたものの、そのかわり、すこしあめれると、みずたまりのなかまれたり、また、からだじゅうをどろよごされてしまうのでした。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
調合して、調合の為方しかたが大事ですよ、楽々らくらく
金三は良平の、耳朶みみたぶつかんだ。が、まだ仕合せと引張らない内に、怖い顔をした惣吉の母は楽々らくらくとその手をぎ離した。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おばあさんは、まどめて、また、もとのところにすわりました。こんどは楽々らくらくはりのめどにいととおすことができました。おばあさんは、眼鏡めがねをかけたり、はずしたりしました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼の従弟いとこは少しも蛇を恐れず、杉籬すぎがきからんで居るやつを尾をとって引きずり出し、まわす様に大地に打つけて、楽々らくらくと殺すのが、彼には人間以上の勇気神わざの様にすさまじく思われた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)