桔槹はねつるべ)” の例文
畑があり、森があり、百姓家があり、桔槹はねつるべがある。レールをそれと示してゐる電信柱からつゞいて砂利、運漕店、休憩所、停車場。
百日紅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
米友は早くも、道庵の背中の上の切石をはね飛ばして、それを介抱をしようとすると、道庵が桔槹はねつるべのように飛び上りました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
南向きの広場中には、日がカアッとさして、桔槹はねつるべの影は彼方の納屋の荒壁を斜に区切って消えている。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
くりそばえだくひつてこしらへたかぎけた桔槹はねつるべが、ごうつとごとにぐらり/\とうごいて釣瓶つるべはづさうにしてははづれまいとしてあらそうてさわいでる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
唯有とあ人家じんかに立寄って、井戸の水をもらって飲む。桔槹はねつるべ釣瓶つるべはバケツで、井戸側いどがわわたり三尺もあるかつらの丸木の中をくりぬいたのである。一丈余もある水際みずぎわまでぶっ通しらしい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたしの赤ん坊は死んじまった。妾の死んだ赤ん坊が来たから行かなくっちゃならない。そら其所そこにいるじゃありませんか。桔槹はねつるべの中に。妾ちょっと行って見て来るから放して下さい」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汽車をくだれば、日落ちて五日の月薄紫の空にかかりぬ。野川の橋を渡りて、一路のすなはほのぐらき松の林に入りつ。林をうがちて、桔槹はねつるべの黒く夕空にそびゆるを望める時、思いがけなき爪音つまおと聞こゆ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
桔槹はねつるべギロチンのほねとそびやぎ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
萱やすゝきが人の肩も見えぬばかりに生ひ茂つて、をり/\見る一軒屋には、桔槹はねつるべが高くかゝつて、甜瓜まくわうりきいろく熟してゐた。
草津から伊香保まで (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)