東山とうざん)” の例文
しかし、再び山へけ入ると、東山とうざん音声おんじょうはバッタリ消えて、かえって反対な西山の一角にチラチラ数知れぬ松明たいまつの火が見える。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
画楼というのは元来彩色を施した楼閣の意味だろうが、ここでは青楓氏の画室を指したつもりであり、東山とうざんというのは京のひがしやまを指したのである。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
行く/\旭日あさひ未だ昇らず、曉露げうろの繁きこと恰も雨のごとし。霧は次第に東山とうざんより晴れて、未だ寢覺ねざめに至らざるに、日影は早くも對岸の山の半腹に及びぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
渡し場からむしろを借り、それを河原の真中に敷いて、一瓢いっぴょうを中央に据え、荷物を左右に並べて、東山とうざんのほとりより登り、斗牛とぎゅうかん徘徊はいかいしようとする月に向って道庵は杯をあげ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでまためづらしくなつて、一旦いつたんせたのをまたけてると、不圖ふと假名かなまじらない四角しかくが二ぎやうほどならんでゐた。それにはかぜ碧落へきらくいて浮雲ふうんき、つき東山とうざんのぼつてぎよく一團いちだんとあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それでまた珍らしくなって、いったん伏せたのをまた開けて見ると、ふと仮名かなの交らない四角な字が二行ほど並んでいた。それにはかぜ碧落へきらくいて浮雲ふうんき、つき東山とうざんのぼってぎょく一団いちだんとあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)