来給きたま)” の例文
旧字:來給
「ぼくに二つの考へがある。まあ、そんなに心配したまふな。今夜、こゝへ来給きたまへ。ぼくがちやんとしておくから。」
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
翌年あくるとし(明治四十二年)の春もなほ寒かりし頃かと覚えたりわれは既に国に帰りて父のいえにありき。上田先生一日いちにち鉄無地羽二重てつむじはぶたえ羽織はおり博多はかたの帯着流きながしにて突然おとづれ来給きたまへり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
同時に、自分の勤めている銀行の、京坂けいはん地方のある支店詰になった。代助は、出立しゅったつの当時、新夫婦を新橋の停車場ステーションに送って、愉快そうに、じき帰って来給きたまえと平岡の手を握った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「新聞の翻訳物が有るから周旋しよう。明後日あさって午後に来給きたまえ、取寄せて置こう」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「ああ、恐ろしくなければ、ついて来給きたまえ」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おい、君。君は、こっちへ来給きたまえ」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何処いづこより来給きたまふや、知りがた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
同時に、自分のつとめてゐる銀行の、京坂地方のある支店詰になつた。代助は、出立しつたつの当時、新夫婦を新橋の停車場に送つて、愉快さうに、ぢき帰つて来給きたまへと平岡の手を握つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
出揃でそろつたら見に来給きたまへ。いゝかい。楽屋口がくやぐち𢌞まはつて、玉水たまみづを呼んでくれつてひたまへ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これはたくましい毬栗坊主いがぐりぼうずで、叡山えいざん悪僧あくそうと云うべき面構つらがまえである。人が叮寧ていねいに辞令を見せたら見向きもせず、やあ君が新任の人か、ちと遊びに来給きたまえアハハハと云った。何がアハハハだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくの如く先生はわが拙作の世にいづるごとにあるいは書を寄せあるいはわが来給きたまひて激励せられき。『三田文学』第一号漸く出でんとするや先生の書簡はますます細事にわたりて懇切をきはめぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)