本山もとやま)” の例文
土佐長岡郡の奥に本山もとやまと云う処がある。今は町制をいて町と云うことになっているが、昔は本山郷と云って一地方をなしていた。
山の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『お時は近頃色氣づいた。』『隣の本山もとやまさんへ來る牛乳配達とをかしい。』『いつでも垣根の向うと此方でベチャ/\何か話してゐる。』
反古 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
美濃の鵜飼うがいから信州本山もとやままでの間は尾州藩、本山から下諏訪しもすわまでの間は松平丹波守まつだいらたんばのかみ、下諏訪から和田までの間は諏訪因幡守いなばのかみの道固めというふうに。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「木曾路には、獣類の皮をあきなふ店多し、別して贄川にへかはより本山もとやままでの間多く、また往来の人に、熊胆を売らんとて勧むる者多し、油断すべからず」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
洗馬から本山もとやまへ出、本山から新川にいがわ奈良井ならいへ出て、奈良井から藪原やぶはらへ参りまするには、此の間に鳥居峠とりいとうげがございます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はかんと思ひ込みしにむだと仕たり瞬間に本山もとやまに着けど馬に水もかはず只走りに走る梅澤櫻澤などいふ絶景の地に清く廣やかの宿屋三四軒ありこゝに一宿せざることのしさよ山吹躑躅つゝぢ今を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ここは本山もとやまの本丸小屋だ。——本山というのは、堂木だんぎ山、神明山の総称である。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道は二つある。これから塩尻峠しおじりとうげへかかり、桔梗ききょうはらを過ぎ、洗馬せば本山もとやまから贄川にえがわへと取って、木曾きそ街道をまっすぐに進むか。それとも岡谷おかや辰野たつのから伊那いな道へと折れるか。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
綱にて結びて𢌞らぬやうにし片輪のみにて落し下すに石にきしりて火花をいだす凄じさたとへていはんやうもなし又本山もとやま熱川にえがはの間なりし崕道がけみちくえて往來なり難きにより木曾川の河原へり川を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
洗馬から本山もとやままで三十町
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
美濃の方じゃ、お前、伊勢路いせじからも人足を許されて、もう触れ当てに出かけたものもあるというよ。美濃の鵜沼宿うぬましゅくから信州本山もとやままで、どうしても人足は通しにするよりほかに方法がない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)