木米もくべい)” の例文
あの聡明な木米もくべい煎茶器せんちゃきも、支那の雑器に見られる染附に、太刀打ちができないではないか。無心な美の前には賢い智慧もまだ愚に見える。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
なお個人作家としては仁清にんせい乾山けんざん木米もくべい等もっとも崇敬の的となり、好事家こうずか識者の間に重きをなしております。
近作鉢の会に一言 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
名高い京都の陶工青木木米もくべいは、自分の職業柄日本はいふに及ばず、支那南蛮の物まで、良土といはれる土は大抵集めてゐたさうだが、いつも戯談ぜうだんまじりに
その人又云ひしは、されどわれら若きものは、木米もくべいの好みの善きことも重々承知はしてゐれど、黒羽二重づくめになる前に、もつといろいろの事をして見たい気ありと。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
三渓の蒐集品は文人画ばかりでなく、古い仏画や絵巻物や宋画や琳派りんぱの作品など、尤物ゆうぶつぞろいであったが、文人画にも大雅たいが蕪村ぶそん竹田ちくでん玉堂ぎょくどう木米もくべいなどのすぐれたものがたくさんあった。
漱石の人物 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あのエッジウードとか木米もくべいとかの作は個性の出た個人的作を代表し、あの蒔絵まきえとかお庭焼にわやきの如きは官僚の貴族的作品である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
木米もくべい何時いつ黒羽二重くろはぶたへづくめなりし由。これ贅沢ぜいたくに似て、かへつて徳用なりと或人云へり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
無理かも知れぬが、試みに画家に例えるならば、栖鳳せいほう大観たいかんのうまさではない。靫彦ゆきひこ古径こけいでもない。芳崖ほうがい雅邦がほうでもない。華山かざん竹田ちくでん木米もくべいでもない。呉春ごしゅんあるいは応挙おうきょか。ノー。
河豚のこと (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
あの光悦こうえつが捕えたいと腐心したのも、南方朝鮮の下手げてな茶碗に潜む美でした。あの木米もくべいが、鋭くねらった煎茶茶碗の美も、明清の下手げてな蒔絵に宿る風格でした。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
無理かも知れぬが、試みに画家に例えるならば、栖鳳せいほう大観たいかんの美味さではない。靫彦ゆきひこ古径こけいでもない。芳崖ほうがい雅邦がほうでもない。崋山かざん竹田ちくでん木米もくべいでもない。呉春ごしゅんあるいは応挙おうきょか。ノー。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
あの一へらの削りや、手作りの高台には、強さはあるがなお作為が残る。個人的作者で、美意識を多量に有つ代表者は木米もくべいである。しかし木米の賢明も下手げての前には愚に見える。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それでもその中、文化、文政の頃になりまして、山陽さんようとか、木米もくべいとか、竹田ちくでんとか、ああいう連中が少し中国趣味に動きましたが、それとても、結局、木米のごときは、余程日本趣味になりました。
書道と茶道 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
このことは木米もくべいについても云えるであろう。私は木米の焼物で、彼の南画以上に美しいものを見たことがない。私は書家として画家としての木米をはなはだ好む。だが陶工としてはいまだしである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)