木樵きこ)” の例文
その男は、のち間もなく、木樵きこりが檞の木を伐り倒すのに手を借して、その木の下に圧されて歿くなりました。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第四日は五色温泉を経てさんの峡谷を探り、もし行けたらば八幡平はちまんだいらかくだいらまでも見届けて、木樵きこりの小屋にでもめてもらうか、しおまで出て来て泊まる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
麺包パンと水とで生きていて、クリスマスが来ても、子供達にもみの枝に蝋燭ろうそくを点して遣ることも出来ないような木樵きこりのにも、幸福の青い鳥はかごの内にいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まだ沢歩きが今ほどはやらない時分のことだから、木樵きこり小屋の人がひよつこり水をみに降りて来なかつたら、とつくにGは白骨を水に洗はれてゐたに相違ない。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
木樵きこりだなあ」とこんどはまた兄が弟の方を見い見い言った。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
木樵きこうた とりのさへづり みづおと ぬれたる小草をぐさ くもかゝるまつ
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
大きいくすの木の枝を張った向うに洞穴ほらあなの口が一つ見える。しばらくたってから木樵きこりが二人。この山みちを下って来る。木樵りの一人は洞穴を指さし、もう一人に何か話しかける。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
書生はどうしたのかと思いながら、彼女のいえの前へ行って見ました。するとまゆり上げた彼女は、年をとった木樵きこりのじいさんを引き据え、ぽかぽか白髪頭しらがあたまなぐっているのです。
女仙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
検非違使けびいしに問われたる木樵きこりの物語
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)