月卿雲客げっけいうんかく)” の例文
入洛じゅらくすると即日、彼は参内さんだいしていた。天機奉伺てんきほうし伝奏てんそうを仰いで、その日はもどり、あらためて堂上の月卿雲客げっけいうんかくを招待して、春の大宴を張った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
管絃かんげんの余韻、泉水のせせらぎ、果ては月卿雲客げっけいうんかくのほがらかな歓語のこえまでが耳の底にきこえてくるのであった。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その十八日には洛中らくちゅうの盗賊どもこぞってついに南禅寺に火をかけて、かねてより月卿雲客げっけいうんかくの移し納めて置かれました七珍財宝をことごとかすめ取ってしまいます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
また酒色にふけりて一身を誤り一家を破るの憂いも無く、このゆえに月卿雲客げっけいうんかくまたは武将の志高き者はこぞってこの道を学びし形跡は、ものの本に於いていちじるしく明白に御座候。
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
海上の船から山中のいおり米苞こめづとが連続して空中を飛んで行ってしまったり、紫宸殿ししいでん御手製おてせい地震でゆらゆらとさせて月卿雲客げっけいうんかくを驚かしたりなんどしたというのは活動写真映画として実に面白いが
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かつての月卿雲客げっけいうんかくも、人違いするばかりなやつれ方やらごろものまま、怪しげな竹籠たけかご伝馬てんま板輿いたごしなどで、七条を東へ、河原のぼりに入洛じゅらくして来た。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その十八日には洛中らくちゅうの盗賊どもこぞつてついに南禅寺に火をかけて、かねてより月卿雲客げっけいうんかくの移し納めて置かれました七珍財宝をことごとかすめ取つてしまひます。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
世俗の者共月卿雲客げっけいうんかくの任官謝恩の如くに、喜びくつがえりて、綺羅きらをかざりて宮廷に拝趨はいすうするなどということのあるべきでは無いから、増賀には俗僧どもの所為がことごとく気に入らなかったのであろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この勧進田楽には、将軍家の尊氏夫妻をはじめ、北朝の歴々、女院、宮、いわゆる月卿雲客げっけいうんかくから市中の男女数万という見物が群れ集まっていたのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの馬揃えの天覧に、御簾ぎょれんのあたりの月卿雲客げっけいうんかくを驚嘆させ、三十余万の民衆の眼を奪った絢爛けんらんに劣らないはれのいでたちが、この日も、信長とその前後の諸大将旗本をつつんでいた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒をになわせ、財を車にのせ、名器名物を捧げて、上は月卿雲客げっけいうんかく貴紳きしんから、富豪や名のある町人たちまで、いったい何のために、御機嫌伺いの参賀のと、こんなに押しかけてくるのだろうか?
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この鞠ぬすみは伊賀流いがりゅう甲賀流こうがりゅうのものが、かつて信長のぶなが在世ざいせい当時、安土城あづちじょうで試合をしたこともあるし、それよりいぜんには、仙洞御所せんとうごしょのお庭さきで月卿雲客げっけいうんかくの前で、叡覧えいらんきょうしたこともあって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新帝(光厳天皇)の宮居みやいもあやうくみえたほどなので、後堀川ごほりかわの大納言、三条の源大納言、鷲ノ尾中納言、坊城の宰相さいしょうら、おびただしい月卿雲客げっけいうんかくのあわてふためきが、主上をみくるまにお乗せして
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)