曠野ひろの)” の例文
一行はアルバノの山をえたり。カムパニアの曠野ひろのは我前によこたはれり。道の傍なる、蔦蘿つたかづら深くとざせるアスカニウスのつかは先づ我眼に映ぜり。
「ひんがしの、空の曠野ひろのを、ながむれば——むらさきの、雲はたなびき——春野の駒か、霞むは旗か、つわものばらの、つところ……」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はいつか千代子と行き会ったかの橋の欄干おばしまって、冬枯れの曠野ひろのにションボリと孤独ひとりみ寂寥さみしさを心ゆくまでに味わうことも幾たびかであった。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
若草わかくさながら曠野ひろの一面いちめん渺々べう/\としてはてしなく、かすみけてしろ/″\と、亥中ゐなかつきは、さしのぼつたが、葉末はずゑかるゝわればかり、きつね提灯ちやうちんえないで、時々とき/″\むらくものはら/\とかゝるやうに
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いづればまた曠野ひろのにて燒石やけいし昔し噴出せしまゝなり開墾せんにも二三尺までは灰の如き土にて何も作りがたしとぞ此所こゝは輕井澤より沓掛くつかけ追分小田井の三宿の間なり四里程なれば忽ち小田井に着きて滊車を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
曠野ひろのなる蒙古の築地ついぢ一隅ひとすみに物見つくれど見んものは無し
渺茫びょうぼうたる曠野ひろのの中をタタタタとひづめ音響ひびき
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)