晩春ばんしゅん)” の例文
そのうちに、晩春ばんしゅんのながい日もくれかけました。けれど林太郎は、それも知らずにしろ公と遊んでいると、おっかさんがそこへでてきて
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
微風びふうもない晩春ばんしゅんの夕ぐれ、——ありやなしの霞をすかして、夕陽ゆうひの光が金色こんじきにかがやいている。いちめんの草にも、霞にも、竹童のかたにも——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友吉ともきちが、自転車じてんしゃってきたので、りょう一も、自分じぶん自転車じてんしゃして、二人ふたりは、散歩さんぽかけたのです。晩春ばんしゅんのやわらかなかぜかれながらはしりました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
晩春ばんしゅんの夜、三こく静寂せいじゃくやぶって、とつ! こぶ寺うらに起る剣々相摩けんけんそうまのひびきだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ほおをかぜも、さむくはなかったのであります。あたりをまわすと、いつのまにか、晩春ばんしゅんになっていました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雅人がじん住居すまいでもありそうな茅葺かやぶきの家、かけひの水がにわさきにせせらぐ。ここは甲山こうざんおくなので、晩春ばんしゅんの花盛夏せいかの花、いちじにあたりをいろどって、きこまれた竹のえんちりもとめずにしずかである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)