あたらし)” の例文
どの茶屋も軒にはあたらし花暖簾はなのれんをかけて、さるやとか菊岡とか梅林ばいりんとかいう家号を筆太に記るした提灯ちょうちんがかけつらねてある。
島原の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と肩をゆすって、無邪気と云えば無邪気、余り底の無さ過ぎるような笑方。文学士と肩書の名刺と共に、あたらしいだけに美しい若々しいひげ押揉おしもんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は女の貴族的によそほへるに反して、黒紬くろつむぎの紋付の羽織に藍千筋あゐせんすぢ秩父銘撰ちちぶめいせんの袷着て、白縮緬しろちりめん兵児帯へこおびあたらしからず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あたらし洋書ブックの中ほどを開けて読む、天窓あたまの、てらてら光るのは、当女学校の教頭、倫理と英文学受持…の学士、宮畑閑耕。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片隅かたすみ外套がいとうを脱捨つれば、彼は黒綾くろあやのモオニングのあたらしからぬに、濃納戸地こいなんどじ黒縞くろじま穿袴ズボンゆたかなるを着けて、きよらならぬ護謨ゴムのカラ、カフ、鼠色ねずみいろ紋繻子もんじゆす頸飾えりかざりしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
直ぐにあたらしい音がはじまり、寝台ねだいの脚から掻巻かいまきすそへかけて、こう、一つ持上げては、踏落す……それも、爪先つまさきこするでなしに、宙を伝うすそから出て、かかとれ摺れに床へ触るらしく
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、あたらしい瓶がもう来ていたが、この分は平気で服した。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)