料亭りょうてい)” の例文
途中には奥行きの相当深いらしい料亭りょうていへいの外に自動車が二三台も止まっていたりして、何かなまめかしい気分もただよっていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
料亭りょうてい幸楽も午前十時ごろ若い将校から多量の酒と弁当の注文をうけたが、ここもあるいはかれらの宿営所として占領されるかもしれない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
東京の料亭りょうていなどへ持ってゆくと、六か七、うまいときには一〇くらいになるとのことで、いつもふところの寒い私も、そういう幸運にめぐりあいたいものと思い
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
民衆でにぎわっているその料亭りょうていの庭を、しばらくながめ渡したのち——庭のへりには、辻馬車や自家用の馬車がとまっていた——そこから、かたむく日ざしのなかを
それらのひとについて調査ちょうさ結果けっかは、ついに発表はっぴょうされなかつたが、事件解決後じけんかいけつご青流亭女将せいりゅうていおかみ進藤富子しんどうとみこは、つてはらてた口調くちょうになつて、やはり、ある料亭りょうてい女将おかみである女友達おんなともだちむか
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それは震災後山の手へ引っ越していたある料亭りょうていである晩二人で飯をっての帰りに、興味的に庸三が言い出したのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
農林の諸大臣の官邸や、山王ホテル、料亭りょうてい幸楽等が彼等かれらの宿舎として提供された。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
だい一の容疑者ようぎしゃは、青流亭せいりゅうていというかなりおおきな料亭りょうてい女将おかみであつて、進藤富子しんどうとみこというおんなだつた。ほんとうのとしはもう五十にちかく、しかし、みがげたうつくしさで、三十をすこしたぐらいにしかえない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
芸妓屋げいしゃやが六七軒に、旅館以外の料亭りょうていと四五軒の待合がお出先で、在方ざいかた旦那衆だんなしゅうに土地の銀行家、病院の医員、商人、官庁筋の人たちが客であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ひもじい思いをさせられたことが身にしみているので、たとい貧しいものでも、腹一杯食べさせることにしていたからで、出先の料亭りょうていから上の抱えが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一度少しばかりの料亭りょうていの勘定を支払った時でさえ、兄を術ながらせたほどだったので、どうしていいか解らなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
藤川の女将おかみは、年のころ五十ばかりで、名古屋の料亭りょうていの娘といわれ、お茶のたしなみもあるだけに、挙動はしとやかで、思いやりも深そうな人柄な女であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)