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數萬
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すまん
其の
暗夜から、
風が
颯と
吹通す。……
初嵐……
可懷い
秋の
聲も、いまは
遠く
遙に
隅田川を
渡る
數萬の
靈の
叫喚である。……
蝋燭がじり/\とまた
滅入る。
下界を
見ると
眼も
眩むばかりで、
限りなき
大洋の
面には、
波瀾激浪立騷ぎ、
數萬の
白龍の
一時に
跳るがやうで、ヒユー、ヒユーと
帛を
裂くが
如き
風の
聲と
共に、
千切つた
樣な
白雲は
眼前を
掠めて
飛ぶ