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擦付
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すりつ
何しろ、
其奴の正体を見届けようと思って、講師は
先ず
燐寸を
擦付けると、
対手は
俄に刃物を
投り出して、両手で顔を隠して
了った。
彼はこの長者の
窘めるを
傍に見かねて、貫一が枕に近く差寄りて
窺へば、涙の顔を
褥に
擦付けて、
急上げ急上げ
肩息してゐたり。
と云いながら栗の根株へ
両人の顔を
擦付けますから、両人とも泣きながら
この心を知らずや、と
情極りて彼の
悶え
慨くが手に取る如き隣には、貫一が
内俯に
頭を
擦付けて、
巻莨の消えしを
擎げたるままに
横はれるなり。
彼は又もや
燐寸を
擦付けようとする時、人か獣か何か知らぬが、
嶮しい岩を
跳越えてひらりと飛んで来た者がある。
怪からぬ女
哉、と
怒の余に
手暴く
捩放せば、なほ
辛くも
縋れるままに
面を
擦付けて
咽泣に泣くなりき。