担架たんか)” の例文
六人の男の銃で担架たんかを作り、それに死体をのせ、皆脱帽して荘厳な徐行で、居酒屋の下の広間の大きなテーブルの上に運んでいった。
「わたくしのいる病棟のいちばん奥の病室へ、た、たった今、与倉中佐どのが、担架たんかで運ばれて来ました。重……重傷だそうです」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大宮山院長がかけつけて、博士を担架たんかでしずかに病室へ移すよう命じた。そして当分のうち絶対ぜったい面会謝絶めんかいしゃぜつを申しわたした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あけられた戸口からはいって来たのは、担架たんかになった男達で、解剖台の側まで行くと、つつましくそれを床へおろした。と、老人が合図をした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
櫃をば担架たんかに乗せて、それを夫人に命ぜられたグローチゥスの友人ダビット・ダヅレールの宅へ送り届けたのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
するとどこからか河童が二匹、担架たんかを持って歩いてきました。僕はこの担架にのせられたまま、大勢の河童の群がった中を静かに何町か進んでゆきました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その玄関は入院しがけに、担架たんかの上からチラリと天井を見ただけで、本当に見まわすのは今が初めてであった。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼等が担架たんかに乗せるとて血でぬる/\している両脇に手をやると、折れた骨がギク/\鳴った。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
弘一君は母夫人と志摩子さんが附添って、担架たんかで鎌倉外科病院へ運ばれた。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ある晩「あの女」と同じくらいな年輩の二階にいる婦人が担架たんかで下へ運ばれて行った。聞いて見ると、今日きょう明日あすにも変がありそうな危険なところを、付添の母が田舎いなかへ連れて帰るのであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰か、担架たんかの側へ来て、顔をさしよせた。官兵衛はひとみをうごかした。それはなつかしい家臣の栗山善助であり母里太兵衛であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やんごとないお方でございます。私は現場から、電話をうけとったものです。おお、御病人の担架たんかが見えました」
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
担架たんかのうえに横たわっている怪我人をじっと見ていたが、小次郎は決して、それへ向って嘲笑らしいものはうかべてはいなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
救護隊は一彦を担架たんかにのせ、山をくだることになりました。一彦は命を助けてくれた炭やき爺さん木口公平きぐちこうへいにあって、お礼をいってそこを出立しました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
井桁いげたに結んだ丸太担架たんかに五体をくくしつけられた武行者の体は、かつて彼自身が景陽岡けいようこうでしとめた大虎そッくりな恰好にされ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで婦人の屍体はすぐ真白な担架たんかの上に移され、鋪道のかたわらに待っていた寝台自動車にのせて、送りだされた。物見高い群衆は、追い払えど、なかなか減る様子もない。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後を、担架たんかにのせられた弁蔵爺やが、静かに通って行った。鎮台内の聯隊病院は、今夜から戦時病院に編成されていた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きれいに水で洗われた怪物の死骸が、白い担架たんかの上から、解剖台の上にのせられた。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうだ担架たんかにのせられて、何処かへになわれてゆくのだ。さて、何処へ運んで行ってくれるのか」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんならいいんだ。担架たんかを持ってくるから、そのままにしておいてくれ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と近侍はすぐ足軽に担架たんかの仕度を命じた。忠房はその間に、典医から怪我の容態を聞き取った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
消毒所は、もう毒瓦斯が地面をってやって来て、そいつのために中毒して道路の上に倒れる人が一時に沢山出来るわけだが、その人達を担架たんかに乗せて消毒所に収容し、解毒法を加える役目なんだ
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あッ隊長。担架たんかが二つ、こっちへきますよ」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おお、担架たんか、担架」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)