打壊ぶちこわ)” の例文
旧字:打壞
「あれほど己が言っておいたに、今ここでそんなことを言出すようじゃ、まるで打壊ぶちこわしじゃないか」お爺さんは可悔くやしそうに言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そんな一国いっこくなことを言って、大勢の威勢で打壊ぶちこわしにでも会った日には、ちっとやそっとの金では埋合せがつかない」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
責任の位置に坐って見ると物置一つだって歴史があるから容易に打壊ぶちこわす事は出来ない、改革にあせったなら一日だって勤めていられるもんじゃないといった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
若い衆をなぐっていけえこともねえ皿を打壊ぶちこわしたりして見兼ねたから、仲へ這入へえって何故なぜ此様こんな事をすると段々尋ねたとこが、仲人ちゅうにんわしがに悪口あっこういてって掛るから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
オヤ、気障きざ言語ふちょうを知ってるな、大笑いだ。しかし、知れるかノというノの字で打壊ぶちこわしだあナ、チョタのガリスのおんはてとは誰が眼にも見えなくってどうするものか。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あれほどのりっぱな屋敷を打壊ぶちこわさないでそのまま人にゆずり、その金でべつに建てたらよかろうと。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ぽっとかつらをかぶった故人菊五郎の与次郎が、本物の猿を廻わしあぐんで、長いつえで、それ立つのだ、それ辞義じぎだと、が物好きから舞台面の大切たいせつな情味を散々に打壊ぶちこわして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
……碌にかねも持たないで長居をするなどは、誰れに話したって、自分が悪い。それに就いて人は怨まれぬ。が、あの手紙を書いた長田の心持は、忌々いまいましさに、打壊ぶちこわしをやるに違いない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
もう見て来たのか、はやいなあ、天眼通だ。……あれはね、何、買う時から打壊ぶちこわすつもりだったんだよ。あの絵に、秋草の中に、食ものばかりの露店の並んだのを見て、ふらふらとなった。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お島に喰ってかかられたりしたが、やっぱり自分の立てた成算を打壊ぶちこわされながら、その時々の気分を欺かれて行くようなことが多かった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
盛儀も何様どうも散々な打壊ぶちこわしであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「私が暴れて打壊ぶちこわしたようなもんですの。あの人はまたどうして、あんなに気が多いでしょう。ちょいと何かいわれると、もう好い気になって一人で騒いでいるんですもの。その癖嫉妬やきもちやきなんですがね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)