手掛てがか)” の例文
然らばフェノロサがこの穿鑿せんさくに関して最も主要なる手掛てがかりとなせしものは何ぞや。そは唯画中の人物を見てその結髪けっぱつの形状によりしのみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先生がかつて恋は罪悪だといった事から照らし合せて見ると、多少それが手掛てがかりにもなった。しかし先生は現に奥さんを愛していると私に告げた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何か原因のまだとらえられぬものが有るのではないか。小さなことのようだが手掛てがかりはこんなところにひそんでいると思う。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
申入れ八方を尋ぬるに彌七の行方ゆくへさらに知れず神鬮判斷みくじはんだんなどゝ心配する中新町よりは度々たび/\催促さいそくあづかり殊のほか難儀なんぎなすにより又々また/\東堀ひがしぼりゆき勘兵衞へ懸合處かけあふところいまだ一かう手掛てがかりも無き由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「何か手掛てがかりはないかと空想しながら」
ともかくもこの植物が東方列島の風土にふさわず、一度も芽を吹き親木を成長せしめ得なかったということが、もれたる海上の道を探るうえに、好箇こうこ手掛てがかりを供与する。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手掛てがかりのない鉛筆が少しずつ動くようになるのに勢を得て、かれこれ二三十分したら
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一として人のがいならぬ氣にても金子の遣取やりとり致し商賣あきなひ手廣てびろき事なれば如何なる所に遺恨ゐこん有間敷あるまじき者にも非ず又其外にもなんぞ手掛りは無きと云るゝに平吉ヘイ其手掛てがかりと申てはべつに御座らねども爰に少々せう/\心當り是とても右樣の儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
などという聞きかたがあるという話だが、このレイボンなどが、或いはなんらかの手掛てがかりではあるまいか。私はなお他の地方の変った事実に、これからも気をつけていたいと思っている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)