惰弱だじゃく)” の例文
惰弱だじゃくな、雷同的な人気商売の部分を利用して、悪い遊戯を流行させるのがちかみちだという昔の歴史を聞いたことがある。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だから、おまえの家の家族なども、贅沢ぜいたく惰弱だじゃくで我儘で、先人の艱苦などは、夢にも知らん。時々、連れて来て、家族共にも、飲ませるがよいぞ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに反して上士はいにしえより藩中無敵の好地位をしむるが為に、漸次ぜんじ惰弱だじゃくおちいるは必然のいきおい、二、三十年以来
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よい事と許されていた惰弱だじゃく時代であったから、右衛門の母は兼盛と、手をつないで居た間に懐胎したが、何様いう因縁かで兼盛と別れて時用のもとへ帰したのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……都の奴等やつらと来たら、全く軽佻浮薄けいちょうふはくだ。あのような惰弱だじゃくな逸楽に時を忘れて、外ならぬうぬが所業で、このやまとの国の尊厳をきずつそこねていることに気がつかぬのじゃ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
館の老臣でありながら、木曽家にとっては讐敵しゅうてきの、高遠の管領かんりょう伊那盛常もりつねひそかに好誼よしみを通ずるさえあるに、殿を夜な夜なおびき出して、惰弱だじゃくを教える奸臣かんしんが、お館の中にあるからじゃ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
学芸によって国の勃興ぼっこうすることもある、学芸によって国が惰弱だじゃくに流れることもある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「君は第一平生から惰弱だじゃくでいけない。ちっとも意志がない」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
惰弱だじゃくな教育だと思うのです。
おさなご (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
これに反して、主人が惰弱だじゃくで、家風が衰えている家は、いかに構えがおごそかでも、家相というものが、隙だらけで、そこへ忍び込んで仕事をするのは、極めて容易たやすいことになっている。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……都の人間達のようなあんな惰弱だじゃくな気持ではとても生きては行けないのだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
中津へ移住する江戸の定府藩士は妻子と共に大都会の軽便流を田舎藩地の中心に排列はいれつするのいきおいなれば、すでに惰弱だじゃくなる田舎いなかの士族は、あたかもこれに眩惑げんわくして、ますます華美かび軽薄けいはくの風に移り
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
当時のお留守居のいきなところは相当見えないでもないが、その惰弱だじゃくに換えるのに一種の威風を以てしているところを見れば、或いは某々の藩を代表する家老格の程度であるかも知れない。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)