情夫いろおとこ)” の例文
金持ちの権勢家、業突張ごうつくばりの水茶屋養母、その犠牲になる若い娘、その娘の情夫いろおとこ。ちゃんと筋立てが出来てらあ、物語の筋にある奴よ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十六の年には、賭博師いかさまし情夫いろおとこを持って、男にそそのかされてマルセーユに出奔して、曖昧あいまい屋の前借りを踏み倒して訴えられている。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
定「女物の襟へ手紙を入れて置くのは訝しい訳でございますが、情夫いろおとこの処へでも遣るのでございましょう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「とにかく、あの娘の情夫いろおとこは皆んな怪しいと思って間違いはありませんよ、大変な娘があったものさ」
「去年、旦那が死歿なくなって、朝夕淋しくお暮しだろう。慈善だの、何だのと、世間体はよしにして、情夫いろおとこでも御稼ぎなさいな。私やもう帰ります。」と、襟掻合かきあわして立上り
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婦人はある時伊太利イタリー語を彫りつけた葉巻入はまきいれをこの小説家に贈つた所が、フロウベエルは小説の女主人公が自分の情夫いろおとこに贈物をする時に、その伊太利語をそのまゝ借用させた。
(一同へ)あら、いらっしゃい——日本の水兵さんは、みんなロシア娘の情夫いろおとこなんですとさ。
「何ですか。料理屋とか、待合とかの女中と、情夫いろおとことのなかに出来た子だそうですよ。子供がないから、貰って来たっていうんですけれど、何だか解りゃしませんよ。こちらへはちょいちょい伺いますの。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
(畜生——、あの化粧問屋の情夫いろおとこに、逢いに行くんだな……)
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「婚約者やいうのんか。なんや、つまり情夫いろおとこのことやな」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でもマアせいぜい三月だろう、ナーニこの里へ帰って来るよ、情夫いろおとこの太兵衛が糸をあやつり、させる所業しわざに相違ないよ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小瀧こたきと云う芸者は、もと東京浅草猿若町さるわかまちに居りまして、大層お客を取りました芸者で、まだ年は二十一でございますが、悪智あくちのあるもので、情夫いろおとこゆえに借金が出来て
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女房もあり、情婦いろもあり、娘も有る。地位も名誉も段違いの先生だ。酒井俊蔵を夫と思え、情夫いろおとこと思え、早瀬主税だと思って、言いたいことを言え、したいことをしろ、不足はあるまい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
張首明 (安重根の顔を剃りながら)情夫いろおとこでも乗ってるというのかい。
這入って来たのは村上松五郎と云うお瀧の情夫いろおとこで、其の時分は未だ髷が有りました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
年紀としは若し、容色きりょうし、なるほど操は守られますまい、情夫いろおとこが千人あろうと、姦夫まおとこをなさろうと、それは貴女の御勝手だが、人殺ひとごろしをしても仁者と謂われ、盗人どろぼうをしても善人と謂われて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不図ふと深い中になりましたが、三十九歳になる者が、二十一歳になる若い男と訳があって見ると、息子のような、亭主のような、情夫いろおとこの様な、弟の様な情が合併して、さあ新吉が段々かわいゝから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母「むゝう……じゃア何か情夫いろおとこを連れやアがって駈落いして来たか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)