しよ)” の例文
兜町かぶとちやうの仲買屋に書記が入用との話ゆゑ、行つて見るとう新しい人が入つて居た。「運の悪い時は何所まで行つても駄目です。」としよげ切つて居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
おくみは、腰をかけるところに立つて、しよんぼりと窓の硝子の縁をいぢつてゐられる坊ちやんを抱くやうにして言つた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
私は「まゐつた……」と内心手をあげて鼻で吐息をした。私はしよげてしまつた。これまで私のこしらへたスタンプはゴム印ではなく、ロー石だつたのである。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
幕太郎 それから、快活だけれど、しよげ方もひどいでせう。つまり、幾分、ヒステリツクですね。
頼母しき求縁(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ヘルマー (跡につきながら)おい/\、家の小雲雀はそんなに羽を落してしよげちやあいけない。おや! 栗鼠さん、拗ねてるのかい? (金入を取出し)ノラこれは何?
人形の家 (旧字旧仮名) / ヘンリック・イプセン(著)
與吉よきち學校がくかうからかへつてひつそりとしたいへたゞ卯平うへいがむつゝりとしてるのをると威勢ゐせいよくけてたのもしよげて風呂敷包ふろしきづゝみ書籍しよせきをばたりと座敷ざしきげてにはしまふ。卯平うへい
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二三百円も負けたかと思つたが、それどころではないらしい木山のしよかたであつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
……と彼は、ハツとしたさまで、あぶなく鑵を取落しさうにした。そして忽ち今までの嬉しげだつた顏が、急にしよれた、にがいやうな悲しげな顏になつて、絶望的な太息を漏らしたのであつた。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
(いよ/\しよげて。)どうも詰らねえことになつてしまつたな。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
着物の裾を噛んでしよんぼりして立つてゐられるやうな事もあつたけれど、追々に、おくみと二人になつたのに馴れて、機嫌よく外へ出て遊んで来たりなさる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ヘルマー あはあ! 家の剛情屋さんが、途方にくれてしよげ始めて來たね。
人形の家 (旧字旧仮名) / ヘンリック・イプセン(著)
「姉さんは、いつたいどうしたんです? 今日はいやにしよげてるんですよ」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
晴代は失望したが、木山もしよげてゐた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おくみは洗吉さんが口ではあゝ仰つても、そんなにしよげてもお出でにならないから安心した。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ちよつとしよげ気味で、浦川うらかは子爵の十口はどうかと思ふとか、蓮沼はすぬま司法次官の四口に至つては、冷淡も甚だしいではないかとか、満洲から名前も知らないやうな男で二十口といふ申込があるのは
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さすがに木山はしよげてゐた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
幾分しよげないわけにいかなかつた。
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)