なまけ)” の例文
後で解つたが、名はお芳と云つて、稼ぐ時は馬鹿に稼ぐ、なまける時は幾何いくら主婦おかみに怒鳴られても平氣で怠ける、といふ、隨分氣紛きまぐれ者であつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
近頃相川のなまけることは会社内でも評判に成っている。一度弁当を腰に着けると、八年や九年位げているのは造作も無い。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたしは、あねほしとなりましたときにはなとなりました。それは、うつくしい着物きものをきて、なまけけているのではありません。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうなって参ると猶更になまけるようになって世の中の稼いで暮すと申す活業なりわいに逆らってゆくもので、到頭破落戸ごろつき仲間へおち、良くない悪法ばかりやっております。
「お前本気か、お前がそんなことを云ひ出してどうするんだ。辛抱するに越したことはねえさ。俺見たいになまけたつてつまんねえさ。俺あお前のやうな辛抱人になりたくつて仕様がねえのに。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
從ツてめしふ、寢る、起きる、べて生活が自堕落じだらくとなツて、朝寢通すやうなこともある、くして彼は立派ななまけ者となツて、其の居室きよしつまでもやりツぱなしに亂雜らんざつにして置くやうになツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
生家うちはその村でも五本の指に數へられる田地持で、父作松と母お安の間の一粒種、甘やかされて育つた故か、體も脾弱ひよわく、氣も因循ぐづで學校に入つても、勵むでもなく、なまけるでもなく
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
生家うちはその村でも五本の指に数へられる田地持で、父作松と母お安の間の一粒種、甘やかされて育つた故か、体も孱弱ひよわく、気も因循ぐづで、学校に入つても、励むでもなく、なまけるでもなく
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)