思付おもいつ)” の例文
兄の家来が一人ひとりあるその家来に、只の枕をして見たいからもって来いといったが、枕がない、どんなにさがしてもないと云うので、不図ふと思付おもいついた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これには、の組仕事師中の泳ぎの名人の思付おもいつきで、六間ばかりの油紙で張った蛇体の中に火をともし、蛇身の所々に棒が付いてあるのを持って立泳ぎをやる。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
以前ぶらぶらしていた時分行きれた八丁堀はっちょうぼり講釈場こうしゃくばの事を思付おもいついて、其処そこで時間をつぶしたのち地蔵橋じぞうばし天麩羅屋てんぷらやで一杯やり、新富町の裏河岸うらがしづたいに帰って来ると
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誰かいい人を思付おもいつかれたら、どうか教えて下さい。では、兄さんにはよろしく
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ソレから私もしって居る金持の人にしきりに勧めて金貨を買わせた事があるが、れもただ人に話をするばかりで自分には何にもようとも思付おもいつかぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この声にうながされて、東洋の都市は歓楽よろこびもなく、哀傷かなしみもなく、ただ寝よ、早く寝よ、夢さえ見る事なく寝よとて暗くなって行くのだ。自分は、ヴェルレーヌの一句を思付おもいついた。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
初めはいきた亀ノ子となど売りしが、いつか張子の亀を製し、首、手足を動かす物を棒につけ売りし由。総じて人出ひとで群集ぐんしゅうする所には皆玩具類を売る見世みせありて、何か思付おもいつきし物をうりしにや。
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
どうしても露西亜人の思付おもいつく物でない。シテ見ると噂の通り何処どこにか日本人の居るのは間違いない、あきらかわかって居るけれども、到頭分らずにかえっ仕舞しまいました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)