応対おうたい)” の例文
この老人は応対おうたいのうまいというのが評判ひょうばんの人であったから、ふたりの使つかいがこの人にむかってのびと口上こうじょうはすこぶる大役たいやくであった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「ここは鐘巻かねまき陣地じんちもどうよう、鉄砲紋てっぽうもんりまわしたこのなかへ、むだんで一歩たりとみこんで見よ、渡来とらい短銃たんじゅうをもって応対おうたい申すぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士はくしまどをしめ、もう一つくえのまえにすわった。一時間ほどたったとき、玄関げんかんのベルがはげしくなった。応対おうたいにでていくお手伝いの足音がした。
二人の容貌ようぼうがすでに意地の好くない対照を与えた。しかし様子とか応対おうたいぶりとかになると僕はさらにはなはだしい相違を自覚しない訳に行かなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
曾根少佐は、それまで多寡たかをくくったような調子で、応対おうたいしていたが、やっと俊亮の鋒先ほこさきを感じたらしく、急にいずまいを直して、口ひげをひねりあげた。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ただ聞いていると、かれはなにか高貴こうき有力ゆうりょくな人物と応対おうたいしているように思われたかもしれなかった。
俗に打てば響くと云うのは、恐らくあんな応対おうたいの仕振りの事を指すのでしょう。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
時分じぶんだから上れと云わるゝので、諸君の後について母屋のおもて縁側えんがわから上って、棺の置いてある十畳の次ぎの十畳に入る。頭の禿げた石山氏が、黒絽の紋付、仙台平の袴で、若主人に代って応対おうたいする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、すぐ立ち直って、このように応対おうたいをした。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、初子は二人の応対おうたいには頓着なく、ななめに紫のパラソルを開きながら
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)