にん)” の例文
苦しさえがたけれど、銭はなくなる道なお遠し、ごんという修行、にんと云う観念はこの時の入用なりと、歯をくいしばってすすむに、やがて草鞋わらじのそこ抜けぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
取つて返しの付かない傷まで附けさせて、私は、狭山さん、あんまり申訳が無い! かん……にん……して下さい
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
なんでも堪忍かんにんをしなければいけんぞ、堪忍のにんの字はやいばの下に心を書く、一ツ動けばむねを斬るごとく何でも我慢がまん肝心かんじんだぞよ、奉公するからは主君へ上げ置いた身体
かれは、にんを守って人とり、にんして、強国の間に生き、忍にって今日の位置を築いた。消極的な忍ではなく、積極的な大希望を遠くに期している忍であった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にんの道は一つでございます、憤りをしずめるの道は、忍の一字のほかにはあるものではございません、たとえ、大千世界を焼き亡ぼすの瞋恚の炎といえども、忍辱にんにくの二字が
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かえりみれば、家康の幼少から、壮年期の大部分は、にんの一字につきる半生だった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我等を囚へし慈にん岩窟いはやは我が神力にて扯断ちぎり棄てたり崩潰くづれさしたり、汝等暴れよ今こそ暴れよ、何十年の恨の毒気を彼等に返せ一時に返せ、彼等が驕慢ほこりの臭さを鉄囲山外てつゐさんげつかんで捨てよ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
にん。忍。忍。——と、内匠頭は護符のように、念じた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ。忍ぼう。にんの一字を護符ごふとして」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そなたにも、また家臣たちにも、そう心配かけてはすむまい。……今は何事もにんの一字が護符ごふよ。この九郎さえ忍びきればおことらの心も休まろう。——通せ、ここでよい。義経が仮病けびょうでないことも、景季の眼に見せてくりょう」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)