忍込しのびこ)” の例文
私ども十六人が、皆、頭から石油を浴びて、左右のたもとに火薬を入れたまま石垣を登って番兵の眼をかすめ、兵営や火薬庫に忍込しのびこみます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
部屋の隅には、いつの間に忍込しのびこんだのか、一人の少年が立っていて、ピストルをじっと向けているではありませんか。
計略二重戦:少年密偵 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
昨夜と同じように、その田口という男が発光室で喉を掻切かききられて死んでいたのです。犯人は何処どこからも忍込しのびこめません。傷口は、……吉井君のと寸分違わずです。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ふと、あるひわらひとがあるかもれぬ。が、それ秘密ひみつがなかつたをりのことで、つたら、それこそ大事だいじだ。わたしむし此不安このふあんすために、そつと四畳半でふはん忍込しのびこんだ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
のこさぬ者なり此越前がにらんだまなこちがひはないぞと申されければ勘太郎も所詮しよせん助かり難しと斷念あきらめ然らば白状仕つらんとて居直ゐなほり米屋の隱居とは存ぜざれども夜中やちう忍込しのびこみ切害の上金百兩うばとりたるに相違之なくと白状に及びければ神妙しんめうなりと申され其金百兩有りし事如何して知りたるやとたゞされしに勘太郎其日小間物屋彦兵衞金子無心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
犯人の忍込しのびこんだ処はロスコー家正面のバルコニーの真下に当る重たい板戸で、俗に万能鍵と名付くる専門の犯罪用具の中でも、最も精巧なものを使用してコジリ開けたものである事が
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)