心張棒しんばりぼう)” の例文
それからイツモの通りに慌しく表の板戸をおろして小潜こくぐりの掛金をシッカリと掛け、裏の雨戸を閉めて心張棒しんばりぼうを二本入れた。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこの心張棒しんばりぼうへそッと手がかかった時、金右衛門の第六感をビクッとさせたのは、その外の声なき空気でありました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作の来るのを防ぐために、お島は夜自分の部屋のふすま心張棒しんばりぼう突支つっかえておいたりしなければならなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
まつろう不承無承ふしょうぶしょうに、雨戸あまど心張棒しんばりぼうをかうと、九しゃくけんうちなかふたた元通もとどおりのよる世界せかいかわってった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
誰ひとり異存があっておたまり小法師こぼしがあるもんか、なあおい、みんな……棒っ切れでも、心張棒しんばりぼうでもかついでって、先生に刃向かうやつらをたたきのめしてしめぇ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこに一間間いっけんまだけの戸があって、心張棒しんばりぼうふさいである、その心張棒を米友がはずしにかかりました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うち心張棒しんばりぼうを構えたのは、自分を閉出しめだしたのだと思うから、我慢にもたのむまい。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨夜寝る時に確かにかって置いたはずの心張棒しんばりぼうが外れているのです。
母の変死 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すばやく寝室をでると、博士は、長い廊下のほうへはいかず、寝室をでたすぐ右側のかどにあるふだんはつかったこともない、しめきって、ふとい心張棒しんばりぼうをかった、重い杉の板戸のまえに立ちました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
お市は心張棒しんばりぼうを外すと、思い切ってガラリと開けました。
返辞がないので、自分で流し元へ足を入れて、ざぶざぶと泥足どろあしを洗い、裏口をきょろきょろしながら、暑いのに、戸を閉めて、心張棒しんばりぼうをかってしまう。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土産みやげなんざいらねえから、そこをめたら、もとのとおり、ちゃんと心張棒しんばりぼうをかけといてくんねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と言って米友は、雨戸の際まで子鷲こわしの入った籠をかつぎ出して、そこで、片手でもって心張棒しんばりぼう取外とりはずし、鍵を上げて、カラリと戸を押開いたものですから、お雪ちゃんが
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うち心張棒しんばりぼうかまへたのは、自分じぶん閉出しめだしたのだとおもふから、我慢がまんにもたのむまい。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
中から用意の心張棒しんばりぼうが掛っているということは知らないので、今は、お蝶と龍平、あたかも錠前の呪縛じゅばくにかかったように、かねば開かぬほど意地になって
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)