御衣ぎょい)” の例文
下賜品は女院からお出しになったが、なお親王はみかどからも御衣ぎょいを賜わった。この当座はだれもだれも絵合わせの日の絵のうわさをし合った。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
内侍所ないしどころに雨や月影が洩って、冬ともなれば、御衣ぎょいしろにすら事を欠くと、勿体なげに沙汰する下々の憂いもまことであろう。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで主上におかせられては、侍臣花山院師賢もろかた卿へ、兗竜こんりゅう御衣ぎょいをお着せになり、御輿おんこしに乗らせて比叡山へつかわし
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何れも平紋ひょうもん狩衣かりぎぬに帯剣、お経の施物、御剣ぎょけん御衣ぎょいを捧げ持ち、次々に東のたいより南庭を渡り、西の中門へ静かに出て行くさまは、まことに壮厳で美しかった。
一方には、紫宸殿ししんでんでの御対面の式がパアクス以外の二国公使に対して行なわれた。新帝は御袴おんはかまに白の御衣ぎょいで、仏国のロセスとオランダのブロックとに拝謁を許された。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
逆臣ぎゃくしん尊氏たかうじめられて、あめした御衣ぎょい御袖おんそでかわく間もおわさぬのじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
すると華歆かきんが、王朗へきっと眼くばせしたので、帝は御衣ぎょいの袖を払って、急に奥の便殿へ馳け込んでしまわれた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次いでその仰せがあって、柳花苑りゅうかえんという曲を、これは源氏のよりも長く、こんなことを予期して稽古がしてあったか上手じょうずに舞った。それによって中将は御衣ぎょいを賜わった。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御衣ぎょいを解いて眠らずにいることだけでも、せめて何かへの、申しわけとしておられるのかもしれなかった。とにかく、めッきりお痩せになり、おひげものびた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後主劉禅りゅうぜんは、孔明がこう別れを奏してひれ伏すと、何のことばもなくしばし御衣ぎょいたもとおもてをつつんでいた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍座じざの公卿の、ただ一人すら見えぬわびしいだたみに、胡坐あぐらし給うて、御衣ぎょいもいと古びたままなお姿だが、しかし、かつての御威厳をすこしも卑屈にはしておられず、むしろ意識的に
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楼台は蜘蛛の巣にすすけ、珠簾しゅれんは破れ、らんは朽ち、帝の御衣ぎょいさえ寒げではないか。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遂には、玉座に迫って、帝の御衣ぎょいにすがって、泣訴きゅうそした。帝は、当惑そうに
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、華歆かきんもまた、声をあららげて、御衣ぎょいのたもとをつかみ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)