御籤みくじ)” の例文
占いやお神籤みくじはこれまでにも、たびたび引いて見たことがある。磯野との縁が切れそうになった時も、わざわざ水天宮で御籤みくじを引いた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何處か分らぬ奧の方で、ざら/\ツと御籤みくじ竹筒つゝを振動すらしい響がする。人々の呟く祈祷の聲が繪額の陰に鳴く鳩の聲にまじはる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
六二六頁になって、お銀とお君とが御籤みくじを取りに来る。そこでお銀が、「この通り八十五番の大吉と出てゐますわいな」
中里介山の『大菩薩峠』 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
前日記したる御籤みくじの文句につき或人より『三世相』の中にある「元三大師がんざんだいし御鬮みくじしょう」の解なりとて全文を写して送られたり。その中に佳人水上行かじんすいじょうにゆくを解して
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この馬の為めにこの神社は馬寺ホース・テンプルという名前で外国の観光客社会に知られているそうだ。西洋人が能く来ると見えて、英文御籤みくじというのを社務所で売っている。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうして甲府の市中へ入ったということがわかり、甲府の市中へ入って八幡様へ参詣をしたということもわかり、そこでお御籤みくじを取ったということもわかりました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大ようにたかをくくりながら、気取ったニヒリストにもならず、安易なエピキュリアンにもならずお御籤みくじの筒のように自分の中に在る何物にまれ、掴まれて振り動かされ
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
左右のれんを……失礼ながら、嬉しい、御籤みくじにして、おもいの矢のまとに、線香のたなびく煙を、中の唯一条ひとすじ、その人の来る道と、じっと、時雨しぐれにも濡れず白くほろほろとこぼれるまで待ちましたが
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもひあまりて御籤みくじけば
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
拭くのも張合いのないその抽斗ひきだしの底には、どうなるか解らなかった母子の身の上を幾度となくうらなった古い御籤みくじなどが、いまだにしまってあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
去年からの疑惑とを思合おもいあわせて、これから先どんな事が起るかも知れないと、急に空おそろしくなって、今まで神信心は勿論もちろん、お御籤みくじ一本引いたことのない身ながら
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「わたしはここに待っているから、お前だけあちらへ行ってお御籤みくじをいただいて来ておくれ」
彼がこの二者の選択を自ら決断する能はずして神の御籤みくじに依りたるに、御籤は俳諧を為すべしとありしとかや、便すなわち俳諧の独吟千句は成れり。これより先連歌師は時に俳諧の発句を成すことあり。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お銀は惑わしいことがあると、よく御籤みくじを取りに行く近間の稲荷いなりへ出かけて行った。通りの賑やかなのに、ここは広々した境内がシンとして、遠い木隠れに金燈籠かなどうろうの光がぼんやり光っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「なんにしても結構なお御籤みくじのようでございます」
「お嬢様、お御籤みくじをいただいて参りました」