御寝ぎょし)” の例文
旧字:御寢
「今日よりはお獄舎ひとやへ、夜の灯も、火桶ひおけ(火鉢)も差し上げますゆえ、昼や御寝ぎょしの座までも、充分おしのぎよいように、お用いください」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何、そりゃおいら整然ちゃんうまくやってるから、大概内の奴あ、今時分は御寝ぎょしなっていらっしゃると思ってるんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いったい資子はなにをしているのかと、三層上の部屋へ踏みあがって行くと、寝た間も気をたかぶらしている癇走った御料人ごりょうにんが、蒼白んだ小鼻のわきに寝脂ねあぶらを浮かせ、前後不覚に御寝ぎょしなっている。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やはり天皇の御寝ぎょしに侍るひとりに、大納言ノ典侍すけという麗人がある。いつしか、東宮仕えの堀川ノ具親ともちかと忍び逢うて、宮中から馳け落ちした。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あッ、まだ寝ているのか……まだ御寝ぎょしなって、いらっしゃるんですか」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
御寝ぎょしなります、へい、唯今ただいま女中おんなを寄越しまして、お枕頭まくらもともまた、」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山頂だけに、小雨をもった烈風がしとみひさしを吹きなぐり、仮宮にしろ、これが天皇の御寝ぎょしある皇居かと怪しまれるほどだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後醍醐も、后町きさきまちのどの妃の局へもお通いは見えなかった。ひとりよる御殿おとどに悶々と御寝ぎょしもやすからぬご様子だった。
絵巻にある赤鬼青鬼のような鎧武者よろいむしゃなのだ。中でも背の高い一人が女官をとらえて、「……天皇はどこに御寝ぎょしか。つつみ隠すと、そッ首をぶち落すぞ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
灯はなく、天皇の御寝ぎょしの場とて、すぐそこの炉の床だった。そして按察使あぜちノ大納言資名すけなは、土間へじかにむしろを敷き、破れ壁にもたれて、眠るともない姿でいた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内侍とあるからにはもちろん御寝ぎょしはべ御息所みやすんどころ更衣こういにならぶ女性のひとりにちがいない。高嶺たかねの花だ、訊かぬがましであったよと、義貞はなおさら失望したものだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜の御食みけにはまた、あたたかな椀の物が加えられ、やがて御寝ぎょしも新たなのが調進された。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国分寺の行宮あんぐうには、妃のうちのたれかはきっと御寝ぎょしはべっていたが、ゆうべ荒磯の風のまッ暗なうちを、鬼火のような松明たいまつにみちびかれてきたこの別府の黒木のお小屋では、妃も侍者も
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「深夜、御寝ぎょしのあたりをお驚かせ奉り、重々の罪とは存じますなれど」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ御寝ぎょしなさいませぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝はすでに御寝ぎょしだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御寝ぎょしなされませ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)