御大家ごたいけ)” の例文
地主が多くは酒屋となり、御大家ごたいけ居酒いざけを飲みに来るはした人足を歓迎するなどは、実に珍しい国柄と謂ってもよかった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
御大家ごたいけのお孃樣……だか、奧樣だか、……阿母おつかさん……だか知らないが、お駕籠かごにでも召さないとお疲れになるんだね。』と、小池はひやゝかに笑つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
若旦那の甲子太郎様は、御大家ごたいけの坊っちゃんらしい、我儘わがままな方で、ずいぶん道楽もしましたが、人などを殺すような、そんな悪い方じゃございません。
具足町で名高けえものは、清正公せいしょうこう様と和泉屋だという位に、江戸中に知れ渡っている御大家ごたいけだが、失礼ながら随分不取締りだと見えますね。ねえ、そうでしょう。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幔幕まんまくりめぐらした、どこぞの御大家ごたいけなかへ、まよんだあたしたちは、それおまえおぼえてであろ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「この頃緑町では、御大家ごたいけのお嬢様がお砂糖屋をおはじめになって、ことほか御繁昌だと申すことでございます。時節柄結構なお思いたちで、たれもそうありたい事と存じます」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お嬢様は御大家ごたいけ婿取むことり前のひとり娘、わしゃいやしい身の上、たとえいやらしい事はないといっても、男女なんにょ七歳にして席を同じゅうせず、今差向さしむかいで話をしてれば、世間で可笑おかしく思います
「わしが、和歌山の御城下のさる御大家ごたいけに御奉公している時分のこと……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水の流れと人の行末ゆくすえとは申しますが、あれ程な御大家ごたいけ其様そんなにお成りなさろうとは思わなかった、お父様とっさまは七年あと国を出て、へいどうも、何しろおっかさんにお目にかゝり、くわしいお話もうかゞいますが