御出おで)” の例文
『一寸伺ひますが、』と紳士は至極丁寧な調子で、『瀬川さんの御宿は是方様こちらさまでせうか——小学校へ御出おでなさる瀬川さんの御宿は。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「それはあなたの方がよく分っていらっしゃるはずですがね。私はただもう少し先まで御出おでなさい、そのほうが御為だからと申し上げるまでです」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
げんただいま命様みことさまにはなにかの御用ごようびて御出おでましになられ、乙姫様おとひめさまは、ひとりさびしくお不在るすあずかってられます。
見廻しながら私しの年はたしか廿二歳ばかりにてつまは御座りましたが私しをきら此間このあひだ御出おでやりましたと自他じたも分らぬ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふいとつてうちをば御出おであそばさるゝ、行先ゆくさきいづれも御神燈ごじんとうしたをくゞるか、待合まちあひ小座敷こざしき、それをば口惜くちをしがつてわたしうらみぬきましたけれどしんところへば、わたし御機嫌ごきげんりやうがわるくて
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「進もうかよそうかと思って迷っていらっしゃるが、これは御損ですよ。先へ御出おでになった方が、たとい一時は思わしくないようでも、末始終すえしじゅう御為おためですから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうです、御厭おいやでなきゃ、鉄道の方へでも御出おでなすっちゃ。何なら話して見ましょうか」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夕ゆうべ御出おでになったのが悪かったですかね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)