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引包
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ひきつゝ
唯さへ、
思ひ
掛けない
人影であるのに、
又其の
影が、
星のない
外面の、
雨氣を
帶びた、
雲に
染んで、
屋根づたひに
茫と
來て、
此方を
引包むやうに
思はれる。
眞俯向けに
行く
重い
風の
中を、
背後からスツと
輕く
襲つて、
裾、
頭をどツと
可恐いものが
引包むと
思ふと、ハツとひき
息に
成る
時、さつと
拔けて、
目の
前へ
眞白な
大な
輪の
影が
顯れます。