帯紐おびひも)” の例文
旧字:帶紐
「先生、ここなら夜ッぴて飲み明かしたっていいんですから、どうぞ今夜は帯紐おびひも解いたおつもりで召上がっておくんなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全身のネヂが、他愛なくゆるんで、之はをかしな言ひかたであるが、帯紐おびひもといて笑ふといつたやうな感じである。
富嶽百景 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
それは背に当てるが、別に胸当むなあてをも作る。多くは紺地の布で、形は長方形である。そうして背と前とを帯紐おびひもで結ぶ。さて次には手甲てっこう(てうえ)をはめる。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
解きすてた帯紐おびひもに取乱されている裏二階の四畳半は、昨夜舞踊家の木村が帰った後、輸入商の矢田が来て、今朝方帰りがけに窓の雨戸一枚明けて行ったままで
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
布製の胴着の腰を帯紐おびひもでしめ、半ズボンをなん枚も重ねてはいていたが、そのいちばん外側のはだぶだぶで、両側には一列に飾りボタンがつき、両膝りょうひざには房がついていた。
お神はお愛想あいそを言ったが、倉持は何となく浮かぬ顔で、もぞもぞしていたが、よく見ると彼は駱駝らくだのマントの下に、黒紋附の羽織を着て、白い大きな帯紐おびひもを垂らしていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
おせんの桜湯さくらゆむよりも、帯紐おびひもいたたまはだたかァござんせんかとの、おもいがけないはなしいて、あとはまったく有頂天うちょうてん、どこだどこだとたずねるまでもなく、二れいと着ていた羽織はおりわたして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、何かの折にいったので、肌着のみならず黒絹の小袖も帯紐おびひもも新しく縫って今朝までに、しつけ糸を抜けばよいように、すべて揃えてあるのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お綱も真から帯紐おびひもをといて、寝こんでいるかどうか? ……。とにかく、目にみえないあるものが、仄暗ほのぐらい灯にまたたかれている二ツの枕を通っている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帯紐おびひもかず七、八日は必死に看病をしたけれど、とうとう病床とこに就いたままってしまったんですよ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女も、足軽小者たちと一緒に、初めの夜から帯紐おびひもいて休んだことは片刻かたときもない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄徳は、彼の調子にのって、自分の帯紐おびひもをといてしまうような風は容易に示さない。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「抜かりはあるまいが、夜明けまでは、一切、帯紐おびひもゆるめて、懈怠けたいはならぬぞ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郭汜はつい帯紐おびひもいて、泥酔して家に帰った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「範宴のいただかぬ分は、わしがちょうだい申そう、こよいは、お志に甘えて、堪能たんのうするほど飲もうと思う、帰りには、車のうちまでかいこんでもらいたいものだ、それだけは頼んでおくぞ」僧正はそういっていかにも帯紐おびひも
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)