屡〻しば/\)” の例文
神の現前しくは内住若しくは自我の高挙、光耀等の意識につきては、事に触れ境に接して、予がこれまで屡〻しば/\みづから経たる所なりしが
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
その名をさんははゞかりあれど、同郷人の中に事を好む人ありて、余が屡〻しば/\芝居に出入して、女優と交るといふことを、官長のもとに報じつ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
畢竟只「自分の気のまぎらし方の区別」に過ぎなくはないか。そんな気が近頃の彼には屡〻しば/\真面目に起るのであつた。
高輪の私の宅に私が放火した事もなく土方にけさせた事もありませぬ。何処から火が出たかも存じませぬ。私は屡〻しば/\火事に遭いましたけれどもかつて放火はいたしませぬ。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
而して母氏も亦女紅の隙を以て其愛児を教育せり。後来の大儒は屡〻しば/\温習をおこたり屡〻睡れり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
さいはひなるかな、せふ姙娠中にんしんちゆう屡〻しば/\診察を頼みし医師は重井おもゐと同郷の人にして、日頃ひごろ重井おもゐの名声を敬慕し、彼と交誼こうぎを結ばん事を望み居たれば、此人このひとによりて双方の秘密を保たんとて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
横笛愈〻こゝろまどひて、人の哀れを二重ふたへに包みながら、浮世の義理のしがらみ何方いづかたへも一言のいらへだにせず、無情と見ん人の恨みを思ひやれば、身の心苦こゝろぐるしきも數ならず、夜半の夢屡〻しば/\駭きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かれ非常ひじやう讀書どくしよこのんで、屡〻しば/\倶樂部くらぶつては、神經的しんけいてきひげひねりながら、雜誌ざつし書物しよもつ手當次第てあたりしだいいでゐる、んでゐるのではなく間合まにあはぬので鵜呑うのみにしてゐるとふやうな鹽梅あんばい
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
予は予が見神の実験の、或は無根拠なる迷信ならざるかを疑ひて、この事ありし後、屡〻しば/\之れを理性の法庭に訴へて、其の厳正不仮借なる批評を求めたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
君が痛酷なる論文を「文学界」に掲げて余を駁撃ばくげきしたるより数日を隔てゝ君は予が家の薯汁飯を喫せり。余が君に遇ふや屡〻しば/\論駁の鋒を向けぬ。君はがうも之れにさからふことなかりし也。
北村透谷君 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)