小祠しょうし)” の例文
とある海岸の小祠しょうしで、珍しく倒れないでちゃんとして直立している一対の石燈籠を発見して、どうも不思議だと思ってよく調べてみたら
静岡地震被害見学記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その上に、彼は白無垢しろむくの布を肩からって、胸にうやうやしく白木のほこらをかかえていた。唐突なほど真面目まじめくさっていた。鎮守の小祠しょうしである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
二人の横たわっている前方の夕空にソビエットの大使館が高さを水交社と競っていた。東郷小祠しょうしの背後の方へ、折れ曲っている広い特別室に灯が入った。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
大火の際焼けましたが、破片は今も残っていて、花川戸の何処かの小祠しょうしにでも納めてあるでありましょう。
此処から見ると㓐別は一目だ。関翁は此坂の上に小祠しょうしてゝ斃死へいしした牛馬のれいまつるつもりで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
のみならず、孔明の死に会うや、蜀の百姓は、びょうを立て、を築き、彼の休んだあとも、彼の馬をつないだ木も、一木一石の縁、みな小祠しょうしとなって、土民の祭りは絶えなかった。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或日、深川の町はずれを処定めず、やがて扇橋おうぎばしのあたりから釜屋堀かまやぼりの岸づたいに歩みを運ぶうち、わたくしはふと路傍の朽廃きゅうはいした小祠しょうしの前に一片の断碑を見た。碑には女木塚おなぎづかとして、その下に
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
路傍の小祠しょうしにいこって頭数を検するに、こいつだけは無事息災ぶじそくさい、まっさきに逃げ出して来たつづみの与吉のほかに、二十八人のうちから死者大屋右近、乾万兵衛、小松数馬、里村狂蔵の四名を出し
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
従来、祇園ぎおんの社も牛頭ごず天王と呼ばれ、八幡宮はちまんぐうも大菩薩と称され、大社小祠しょうしは事実上仏教の一付属たるに過ぎなかったが、天海僧正てんかいそうじょう以来の僧侶の勢力も神仏混淆こんこう禁止令によって根からくつがえされたのである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして道ばたにマドンナを祭るらしい小祠しょうしはなんとなく地蔵様や馬頭観世音のような、しかしもう少し人間くさい優しみのある趣のものであった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
上の小祠しょうしにて、お
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清洲橋きよすばしの近くの一銭蒸汽の待合所を目当てに河岸かしを歩いていたら意外な所に芭蕉庵ばしょうあん旧跡と称する小祠しょうしに行き当たった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)