射貫いぬ)” の例文
幸ひ若旦那が煙草に火を點ける積りで、ヒヨイと首を下げた時だからよかつたものの、さうでもなきや眼玉を射貫いぬかれるところでしたよ。
もし第一の場合なりせば、こは日蝕の時、光の射貫いぬく(他の粗なる物體に引入れらるゝ時の如く)ことによりて明らかならむ 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そして、「首領キャプテン」の資格で止れと命じた自分の仲間の商人に正体を見破られてなじられると、勇ましくその男の頭を射貫いぬいて馬を飛ばして逃げ去った。
そこにたおれている少年の心臓が、ピストルに射貫いぬかれ、打砕かれたのを摘出し、それにいる安南人の健全な心臓と取替えたのじゃ。すると、どうじゃ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
津田の言葉は誰にでも解り切った理窟りくつなだけに、同情にえていそうな相手の気分を残酷に射貫いぬいたと一般であった。数歩ののち、小林は突然津田の方を向いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この憎むべき矢に射貫いぬかれた美しい暖い紅の胸を、この刺客の手にたおれたあわれな柔かい小鳥のむくろを。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
将軍ひげいかめしい闘牛士は、金モールの胸から血を流して不恰好ぶかっこうにくずおれていた。彼は包囲の警官たちを威嚇いかくしていたピストルで、われとわが胸を射貫いぬいたのだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まと射貫いぬくと的場まとばの土といっしょに的と箭とを三方さんぼうの上に載せて神前にそなえ、それをもって祭を終ることになっており、祭の前にはみな一生懸命に弓の稽古けいこをする。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日頃の稽古けいこにも、鎧の二領三領は射貫いぬき、総じてあだ矢を射る者などはおりません。馬は、牧の内から心まかせに逸物いちもつを選び取り、朝夕、山林や野を駈けて、きたえに鍛えた駒ぞろいです。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかなるうみ射貫いぬくらん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
幸い若旦那が煙草に火をけるつもりで、ヒョイと首を下げた時だからよかったものの、そうでもなきゃ眼玉を射貫いぬかれるところでしたよ。
「ワハハハハハ。若いの、そいつは無駄さ。おまえが、わしの胸を射貫いぬいても、この船には長く居られまいぞ」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
おれの大きなが、貴様も喧嘩をするつもりかと云う権幕で、野だの干瓢かんぴょうづらを射貫いぬいた時に、野だは突然とつぜん真面目な顔をして、大いにつつしんだ。少しわかったと見える。そのうち喇叭が鳴る。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ガラッ八の心臓を射貫いぬいたでしょうが、飛んで来たのは、白くて太いが、実は三尺ばかりの苧殻おがら、ガラッ八をうんと脅かして、敷居の上へ、ポトリと落ちたのです。
手を入れて、つかみ出したのは、銃弾に射貫いぬかれて、めちゃめちゃに砕けた陳君の心臓だった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)