寓意ぐうい)” の例文
第六十八段、大根が兵士に化ける話は少し怪しいが、次の六十九段と合せて読んで見ると寓意ぐういを主として書いたものとも思われる。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
若し地名だとしても、垂水即ち小滝を写象の中に入れなければ此歌は価値が下るとおもうのである。次に此歌に寓意ぐういを求める解釈もある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
単に多くの人々は、象徴を以て一種の「比喩ひゆ」「暗示」「寓意ぐうい」の類と解している。もちろんこの解説は、必しも誤っているわけではない。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
その裏に恐るべき寓意ぐういがひそんでいました。悪魔の人形芝居は、人形ではない本当の人間の運命を、実に無残な運命を、巧みに象徴していたのです。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三四郎は何か寓意ぐういでもあることと思って、しばらく考えてみたが、べつにこれという思案も浮かばないので
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
百鬼夜行ひゃっきやこうの図と鳥羽絵とばえの動物漫画とは、さまざまなる寓意ぐういの下に描直かきなおされ、また当時物価の高低は富土講ふじこうの登山あるひは紙鳶たこの上下によりて巧に描示えがきしめされたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これらは皆夫の陰相を尾と称え、その状を確かに知るは妻ばかりという寓意ぐういだと解った。
つたふるところ怪異くわいいしよおほくは徳育とくいくのために、訓戒くんかいのために、寓意ぐういだんじて、勸懲くわんちやうとなすにぎず。けだをしへのために、鬼神きしんわづらはすものなり人意じんいいづくん鬼神きしん好惡かうをさつむや。
怪談会 序 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
元禄げんろくを境とし遠くは寛永かんえい頃まで溯るものを初期とし、大きさはほとんど長版である。最初は仏画のみであったことは文献の示すとおりである。だが漸次寓意ぐういを含むある特種な一定の画題を生じた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そういう珍重と親愛とがあるために、おのずから覚官的語気が伴うと見え、女体と関聯する寓意ぐういがあろうという説もある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ゆがみたる、逆説的なる、寓意ぐうい的なる、一の「憎々しきもの」として、それの歪像わいぞうを映すのが普通である。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
三人の伯母おばたちが何かというとぎょうぎょうしく階段や廊下を駆け回る。その時のおおぎょうな甲高い叫び声が狩り場の群犬のほえ声にそっくりであるのは故意の寓意ぐういか暗合かよくわからない。
句の前書には「琴心挑美人きんしんもてびじんにいどむ」とあり、支那の故事を寓意ぐういさせてあるけれども、文字の字義とは関係なく、琴の古風な情緒が、昔のなつかしい追懐をそそるという意味で使ったのだろう。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
強いて寓意ぐういを云々するのは間違だとさえおもえるのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それの意味なんだ。僕の聞くはね。つまり、その……。その言葉の意味……表象……イメーヂ……。つまりその、言語のメタフイヂツクな暗号。寓意ぐうい。その秘密。……解るね。つまりその、隠されたパズル。本当の意味なのだ。本当の意味なのだ。」
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)