家造やづく)” の例文
しかし一度は貴人の別荘とされて、都あたりから、糸毛のくるまろうたけた麗人が、萩を分けて通ったこともありそうな家造やづくりなのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岸を頼んだ若木の家造やづくり、近ごろ別家をしたばかりで、いたかやさえ浅みどり、新藁しんわらかけた島田が似合おう、女房は子持ちながら、年紀としはまだ二十二三。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんでも其の頃は未だ世の中が開けぬ時分でございますが、当節は追々開けてまいり、仕合せの事には大火という者がとんとございません、是は家造やづくりが石造いしづくりあるい店蔵みせぐらに成ったり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また「ぬけられます。」というあかりが見えるが、さて其処そこまで行って、今歩いて来た後方うしろを顧ると、何処どこ彼処かしこも一様の家造やづくりと、一様の路地なので、自分の歩いた道は、どの路地であったのか
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを、上目づかいのあごで下から睨上ねめあげ、薄笑うすわらいをしている老婆ばばあがある、家造やづくりが茅葺かやぶきですから、勿論、遣手やりてが責めるのではない、しゅうとしえたげるのでもない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こゝの御新姐ごしんぞの、人形町にんぎやうちやう娘時代むすめじだいあづかつた、女學校ぢよがくかう先生せんせいとほして、ほのかに樣子やうすつてゐるので……以前いぜんわたしちひさなさくなかに、すこ家造やづくりだけ借用しやくようしたことがある。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)