さだか)” の例文
茘枝の小さきも活々いき/\して、藤豆の如き早や蔓の端も見えむるを、いたづらに名のおほいにして、其の実の小なる、葉の形さへさだかならず。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と詠みしも今の棧橋かけはしの所にては有まじ四五丁のぼりかけて谷に寄たるかたに土地の者の行く近道あり折々此の近道あれど草深く道の跡もさだかならであやふければ是を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「われもよくは知らず、十六七とかいえり。うみの母ならでさだかに知るものあらんや、哀れとおぼさずや」翁はとしより夫婦が連れし七歳ななつばかりの孫とも思わるるを見かえりつついえり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
知る者なし然ども時として鷄の聲などのきこゆる事ありて此は金氣きんきの埋れあるゆゑなりと評するのみ又誰も其他をさだかに知るものなかりける然るに其屋敷の下に毛利家の藩中にて五十石三人扶持ふち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひざをついて、天井を仰いだが、板か、壁か明かならず、低いか、高いか、さだかでないが、何となく暗夜やみよの天まで、布一重ひとえ隔つるものがないように思われたので、やや急心せきごころになって引寄せて、そでを見ると
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)