定規じょうぎ)” の例文
といって、自分の子や周囲の子弟に、ぼくの過程をひきあいに出して定規じょうぎに当てようなんていう時代知らずでもないつもりだ。
紅殻べにがら塗りのかまちを見せた二重の上で定規じょうぎを枕に炬燵こたつに足を入れながら、おさんの口説くどきをじっと聞き入っている間の治兵衛。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
上下とか優劣とか持ち合せの定規じょうぎで間に合せたくなるのは今申す通り門外漢の通弊でありますが、私の見るところではあにひとり門外漢のみならんやで
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
定規じょうぎで予定通りに新しく造り上げた処にあるものでなく、幾代も幾代もの人間の心と力と必要とが重なりかさなって
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
梃子てことしてKの定規じょうぎを取り、手すりを持ち上げようとしたが、おそらくはそうすればもっと容易にそれだけ深く手すりを押しこめることができるからだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
ノルムはその語原ごげんを調べると大工だいくの使用する物指ものさしすなわち定規じょうぎである。この定規にかなったものがノルムてきすなわち英語にいうノーマル(normal)である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
三角定規じょうぎを組合わしたような線を、紙の上に引いてみせて、「これが弾丸だんがん入射角にゅうしゃかくです。分解するとどの方向からとんで来たか、直ぐ出ます、やってごらんなさい」
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日の実習は陸稲播おかぼまきで面白おもしろかった。みんなで二うねずつやるのだ。ぼくはくいりて来て定規じょうぎをあてて播いた。種子しゅし間隔かんかくを正しくまっすぐになった時はうれしかった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いたずらに死文死語に執して相争い、自己を正しとし、自己の定規じょうぎを他に加えるのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
とにかく、見る眼の相違で同じものの長短遠近がいろいろになったり、二本の棒切れのどちらが定規じょうぎでどちらが杓子しゃくしだか分らなくなったりするためにこの世の中に喧嘩が絶えない。
観点と距離 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
寸暇をくつろいで家庭の良い父になって興じるとか——一定の規律があったものだが、信長の代になっては、そういう定規じょうぎはなくなってしまった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにこの例について起こる疑問は、定規じょうぎとして用いた標準はみな自己以外にあることである。学生ならば学校の規則と教師の要求する業務を行うのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
次には平たくして紙の上へ横に置くと定規じょうぎの用をする。またの裏には度盛どもりがしてあるから物指ものさしの代用も出来る。こちらの表にはヤスリが付いているこれで爪をりまさあ。ようがすか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
定規じょうぎのようなものが一ほどあるがそれがみんな曲りくねっている。ますはかりの種類もあるが使えそうなものは一つもない。鏡が幾枚かあるがそれらに映る万象はみんなゆがみねじれた形を見せる。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ミドリは星座図の上に三角定規じょうぎをパタリと置いて、艇長の顔を見上げた。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それと、この画は、武蔵の画の定規じょうぎとされている水墨でないこと。破墨一掃のあの調子でなく描線は一筆一筆慎重に引かれ、面貌や毛髪などにはかなり密な筆がつかわれている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで人をはかるに、いずれの定規じょうぎをもってするか、動物的の標準をもってするか、向上的すなわち思想の上下をもってはかるか、用いるはかりによって人に対する観念がちがってくる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)