定命じょうみょう)” の例文
茂ちゃん、お前は後生というのを知っていますか……人間にしょうを受けたこの世は長くても百年。五十年を定命じょうみょうと致すそうでございます。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一九一五年版、ガスターの『ルマニアの鳥獣譚』三三七頁に記す処に拠ると、ルマニア人は犬の定命じょうみょうを二十歳と見立てたらしい。
定命じょうみょうは仕方のないものだから、心静かに往生をとげるがよい。それに就ては、お前さんの婚礼に二斗のお酒が貸してあったが、あれを返さずに死なれては困る。
土の中からの話 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
肉体の破滅を伴うまで生長し自由になった個性の拡充を指しているのだ。愛なきが故に、個性の充実を得切らずに定命じょうみょうなるものをつないで死なねばならぬ人がある。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「人ひとりなくなったのを、けっこうというはずはないが、まあ、ああして終わりますれば、ハイ定命じょうみょうはいたしかたないとして、まずけっこうでござります、ハイ」
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
五十五じゃア定命じょうみょうとは云われねえくれえで嘸お前さんもお力落しで、新吉此処こゝに居るのか手前てめえ、え、おい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、この藤十郎も、人妻に恋をしかけるような非道な事は、なすまじいと、明暮燃えさかる心をじっと抑えて来たのじゃが、われらも今年四十五じゃ、人間の定命じょうみょうはもう近い。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「人間には定命じょうみょうというものがあるんだ。おせん」源六はしずかに笑った、「……どんなに逃げたって定命から逃げるわけにはいかない、おれはじたばたするのは嫌いなんだ」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お身にしても、また、それがしにしても、早や人間の定命じょうみょうには達しておる。このうえは、よき死に場所を得て、先君のおあとを慕い、われわれが、輔佐ほさの任に足らなかった罪を
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人参を飲んできっと癒るものならば、高貴のお方は百年も長命する筈だが、そうはならない。公方くぼう様でもお大名でも、定命じょうみょうが尽きれば仕方がない。金の力でも買われないのが人の命だ。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五年に渡る辛労しんろうが山吹の体をむしばんだと見えとうとう山吹は病気になった。五歳になった猪太郎が必死となって看病はしたが、定命じょうみょうと見えて日一日と彼女の体は衰えて行き死が目前に迫るように見えた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これそが定命じょうみょうとのみかんなば
痩せても枯れても遠山龜右衞門のむすめじゃアないか、幾許零落おちぶれても、私は死んでも生先おいさきの長いお前が大切で私は定命じょうみょうより生延びている身体だから、私の病気が癒ったって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう、人生ひとのよ定命じょうみょうを生き越えている私たちではありませぬか、両家の為に二人の子のために
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者は酒毒だと云ったけれど、おみきは定命じょうみょうだと心の中で思った。父の心は亡くなった母のことでいっぱいだった、あの不養生も早く母のところへいきたいためだったのかもしれない。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
持った者に幸せな者がござろうか。御身様などは、まだいい。御身様は、物心ついた七歳の時から四十七歳の今日まで、人間の定命じょうみょうを敵討ばかりに過した者の悲しみを御存じないのじゃ
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ははあ、さようでございますかな。定命じょうみょうなれば止むを得ぬこと」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わし定命じょうみょうより余程よっぽど生き延びて居りますから、もう死んでも惜しくねえ身体ですが、たった一人の忰がマアかてえもんでごぜえまして、万年町のおたなへ奉公に遣って、永く勤めて居りますが
おめえにとっては、ここまでがこの世の定命じょうみょう。また、おれたちには出世の門だ。——林冲を殺して面皮めんぴ金印きんいん(刺青)をはぎ取って帰れば、生涯安楽にしてやるとはこう大将軍家のおさしがね。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間の定命じょうみょうはもう近い。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
寿命が尽きたら幾ら助かりてえと思ってもだめだ、ハアどんな火の中水の中でも定命じょうみょうの有るうちは死なねえもんだから、殺すなら殺すともどうとも勝手にしたがいゝ、だがマアよく考えて見ろ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)